おはようございます、ゆまコロです。
ポール・オースター、柴田元幸(訳)『最後の物たちの国で』を読みました。
彼の作品で、女性が主人公の物語を初めて読みました。
●「私は目を閉じ、眠りなさいと自分に言い聞かせます。でも脳のなかは煮えくり返って、その日一日のいろんな情景がつぎつぎ勝手に湧き上がり、無数の街路と肉体がうごめく地獄絵が私をあざ笑います。その混沌に、ついいましがたファーディナンドに浴びせられた侮辱も加わって、眠ることなどもはや論外になってしまいます。唯一、効果があると思えるのは、自慰でした。露骨な言い方で済みません。けれど上品ぶってもはじまりません。それは誰にも覚えがあるはずの解決策です。」
なぜか印象的なこの場面。感情が大きく動く描写が珍しいように思いました。
もう一つ好きな場面は、主人公がヴィクトリアというお医者さんに助けてもらうシーンです。
●「「計画を立てるんです。いろんな可能性を検討してみるんです。行動するんですよ」
「ヴィクトリアも一緒に行動してくれると思うの?」
「そうとは限りませんな。でももしあなたが味方してくださるなら少なくともチャンスはある」
「どうして私が彼女に影響を及ぼせるとお思いになるんです?」
「この目を使って見てるからですよ。私にはちゃんと見えてるんです、アンナ。ヴィクトリアはあなたに心を開いている。他人に向かって彼女がこんなに心を開いたのははじめてです。彼女はあなたに首ったけなんです」
「私たちはただの友だちだわ」
「それだけじゃありません。とうていそれだけじゃありませんよ」
「何の話だかわかりませんけど」
「そのうちわかりますよ。じきに私の言った一言一言が理解できる時が来ます。保証します」」
語っているのが女性だからか、主人公の悲しみや怒りに寄り添いやすく、ハラハラしながら読みました。
ハッピーエンドなオースターはとても好感触でした。物語の道中が怖く、苦しかっただけに。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07/01
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