おはようございます、ゆまコロです。
ポール・オースター、柴田元幸(訳)『ティンブクトゥ』を読みました。
「何かよくないことがあるのであって、それが何なのかは見当もつかなかったけれど、ヘンリーの悲しみがだんだんに自分にも伝染してきて、何分もしないうちに、少年の悲しみを自分のものとして引き受けていた。犬とはそういうものだ。」
この表現が好きです。オースターも犬が好きなのかな、と想像してしまいます。
可愛い犬の表紙を見た時に、一瞬テンションが上がりました。「でも心温まるラストではないような気がする、オースターだから。」と思ってしまいましたが、面白かったです。
ほぼネタバレになってしまいますが、巻末の訳者:柴田元幸さんのあとがきを読むと、この物語における作者の狙いが分かります。
「この『ティンブクトゥ』でも、典型的な結末(たとえば、ウィリーを失ったミスター・ボーンズが、紆余曲折を経て新たな飼い主と幸せに暮らすとか)に物語は一見向かうようでいて、それがくり返し回避される。そのなかで、我々読み手も、作品自体と向き合うと同時に、そうした定型を欲したり嫌ったりする自分自身とも向きあうことになる。ひとつの物語をたどりながら、我々の物語観自体を見直すことにもなるのだ。」
どうかミスター・ボーンズがティンブクトゥで幸せに暮らせますように。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
- 作者: ポールオースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/06/29
- メディア: 文庫
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