おはようございます、ゆまコロです。
ポール・オースター、柴田元幸(訳)『幻影の書』を読みました。
あらすじはこうです。
「飛行機事故で妻と二人の子どもをなくした主人公デイヴィッド・ジンマーは、ある喜劇映画を見たことで再び生きる意味を見出す。」
喜びに満ちた展開が待っているのかと思いきや、そういうわけでもなかったです。
印象的なのは、その映画を作ったヘクターが、恋人と別れるシーンと、どうして新しい恋人を選んだか?を考えるシーンです。
●「誰も私のようにあなたのことを愛しはしないとわかったら、あなたはきっと私のもとに帰ってくるわ、と彼女は言った。ドローレス・セントジョンなんてモノよ、人間じゃないわ、と彼女は言った。見るからにあでやかで、うっとりさせられるけど、一度剝(む)いたらあんなの、がさつで薄っぺらで馬鹿な女よ、あなたの妻になる資格なんかない。その時点で、ヘクターは何か言うべきだったのだろう。ここで何か残酷な、グサッと刺すような科白を口にして、ブリジッドの希望を完全に打ち砕いておくべきだったのだ。だがブリジットの悲しみが、ヘクターにはひどくこたえていた。彼女の献身ぶりをひしひしと感じていた。そのせいで、ブリジッドが短く切れぎれに喋るのを聞きながら、言うべきことも言えなかった。君の言うとおりだよ、とヘクターは言った。たぶん一年か二年しか続かないだろうよ。でも俺はそれをやらずにはいられないんだ。彼女を自分のものにせずにはいられないんだ。とにかくそうしたら、あとはひとりでに決まるさ。」
長続きしないと最初から分かっていても、それ以外にどうしようもない状況というのはあるかもしれませんね。
●「ヘクターとしても、ドローレスをあきらめたくはなかった。毎晩彼女のベッドにもぐり込んで、あの滑らかな、電気を帯びたような体が自分の肌に貼りつくのを感じたい。その夢を手放したくはなかった。」
各々の恋愛模様は分からなくもないのですが、銃を突き付けられた初対面の女性とすぐに寝る主人公も、ヘクターを諦められずリストカットするブリジッドも、映画監督としてのヘクターの仕事をこの世に残したくないというフリーダも、いまいち感情移入できませんでした。
どちらかというと『最後の物たちの国で』の方が好きかもしれません。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
- 作者: ポールオースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/09/28
- メディア: ペーパーバック
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