こんにちは、ゆまコロです。
『身近な鳥のすごい巣』を読みました。
著者は鳥の巣研究科でもあり絵本作家でもある鈴木まもるさんです。
日本で見られる36種の鳥とその巣がスケッチされています。でも全然見たことない鳥も載っていて、興味深かったです。
新書サイズの本なのに、オールカラーで絵本のようにイラスト満載なのが楽しい。
そして鳥好きの私がもっとも盛り上がったのが、巣とともに描かれた卵のイラストが実物大なところ。実際に手にすることはないけれど、もし手に乗せたら、このくらいかなーとイメージすると心躍ります。
身体も小さいスズメ目のセッカ(全長約13センチ)の卵なんて、長径約16mmx短径約11mmだというから、手のひらサイズどころか、指先に乗るくらいしかない。
そんな小さな卵が、イネ科の植物の葉っぱをクモの糸で編んだ巣の中に入っているとか…。うーん、愛おしすぎる。
鳴き声もかわいい。
鳥が好きで図鑑などをよく見ていたつもりなのに、まったく知らないことばかりで目からウロコでした。
例えば、まえがきにある「鳥の巣」は鳥の家ではない、というお話。
多くの人が、「鳥の巣」というと鳥の家だと思っているがそうではない。卵を産むときにつくり、ヒナが巣立つと、もう二度と使わない。通常、雨や風などで崩壊してしまう。
「我が家のツバメは毎年同じ巣を使う」という人がいるが、あの土の部分は家の基礎のようなもので、毎年あの中に枯草や羽毛などを入れて新たに巣をつくっている。だからツバメも毎回つくっているのと変わらない。
鳥の巣は、一番大切な卵とヒナが襲われないよう、発見されにくい場所につくると同時に、暑さや寒さから小さな生命を守るという任務を課せられた、鳥にとってなくてはならない重要なものだ。
しかし、過去の書物をひも解いて見ても、その重要性、かつ面白さを表記したものはほとんどないといっても過言ではない。したがって、世界中の人が鳥や鳥の巣という言葉は知っていても、本当の鳥の巣を知る人はほとんどいないというのが実情だ。
試しに読者の中でメジロやウグイスの巣をパッと頭に思い描ける方がどれだけいるだろうか?さらに、メジロがクモの巣から糸を取って巣をつくっていること、ウグイスがササの葉で屋根のある球体の巣をつくっていることを知っている人はほぼいないのではないだろうか。(「そういえば知らないなあ」と思われた方は、この本を最後まで読むことをお勧めする。)
鳥の巣を知ることは、鳥やヒナのことを知るだけでなく、その鳥の住む環境を知ること、周囲の生物との関係、さらに人が生きるうえで欠かすことができない家や服など、人の暮らしとの関係を知ることにもつながるだけでなく、人がなぜ生きるのか、本能とはなんなのかという哲学的なことまで教えてくれるものなのだ。
恐竜が鳥へ進化したこと、 恐竜が絶滅し、鳥が今の世界に生きていることなど、今までの科学では解明できていなかった謎も、鳥の巣から知ることができるだけでなく、現在の人間社会と、未来を新たな見地で見なおすことにもつながることなのだ。
(はじめに)
(p3)
クモの糸で巣を作るメジロもそうですが、気が遠くなりそうな作業をして巣を作っている鳥が多くて、本当に感心させられます。しかも、教わったわけでもないのに、皆同じように巣作りをするというのが不思議です。
リノベーションされたヒヨドリの巣
ある日、山でヒヨドリの古巣を見つけた。取ってみると、枯葉でドーム状の屋根ができて横に入り口があるではないか。こんなケースは初めて見る。
筆者の住む本州中部は、温暖なためヤマネがツルや枝が密集した場所に枯葉をボール状にした巣をつくることがある。きっとヒヨドリの古巣をヤマネがリノベーションしたのだろう。上野動物園の職員の方に聞いてみると、「ヤマネの生態は不明な部分が多く、可能性はあるだろう」とのことだ。その後、海外の本に「ヤマネが鳥の古巣を使うことがある」との記述を見つけた。 実際に巣箱で寝ているヤマネも発見した。生命が育っていく自然界の営みの豊かさを感じて嬉しくなる。(p52)
このページには、
1.【夏 】ヒヨドリのヒナが巣立った
2.【秋】ヤマネが枯葉で屋根をつくった
3.【冬】ヤマネが春まで冬眠した
という図解があるのですが、そのイラストがとてもかわいい。
冬眠中のヤマネ、見てみたいなあと思ったのですが、見つけても起こすのは厳禁ということなので、写真を見て想像を膨らませます。
下記のリンクから見られる、赤ちゃんを口に咥えて運ぶ写真が、むちゃくちゃ可愛らしいです。(2ページめにいます。)
(・・・)しかし、シャカイハタオリはこの巣をつくることでこんな厳しい環境でも生きられるようになったのだ。実はこの巣は一羽の鳥の巣ではなく、数百羽の鳥が集団で暮らすマンションのような鳥の巣なのである。 断面図でわかるように、それぞれの部屋は個室になっていて下側が入り口になっている。
この巣で重要なのは壁で、枯草を差し込んで形を維持させており、ものすごい数の枯草の集合体のため、壁が厚く断熱効果が高いのだ。外が日中四十度以上の時や夜のマイナス十度の時も巣の中は常に二十六度に維持される。これはNHKの「ダーウィンが来た!」番組制作で現地に行き、実際に温度を測っているから、嘘ではない。
最初に鳥の巣はヒナが巣立つともう二度と使わないといったが、この鳥は例外で、この巣に一年中暮らしている。日中暑いときは、巣の中や下の木陰で休み、夜寒くなると、巣の中に入るので消耗が少なく生きていけるのだ。毎年繁殖期に新しく巣を増築していくので、年々大きくなり、数十年かかってこのような巣になっていくわけだ。
そして、このシャカイハタオリの巣を見るとわかるように、人がつくるかやぶき屋根と形も構造も同じだ。
数百万年前、人は洞窟を住居として暮らしていた。食料を得ようと出かけた時、灼熱の地で木陰を求め一休みしたのがこの巣の下だったのだ。そこは涼しく快適で、上を見ると鳥が枯草を集めて巣づくりしている。「自分たちもやってみよう」と、草を集め、家をつくるようになったのが人の家の始まりといわれている。かくして洞窟のないところでも人は暮らせるようになり、人類発祥の地アフリカから世界中へと、人類は広がっていったのだ。
こうして、枯草を集めた家から始まり、農耕文化を発達させながら、木や土、石などを使ってより快適な空間をつくろうと建築技術を向上させ、現代の人間社会へとつながっていく。
(p22)
このシャカイハタオリは南アフリカにいるスズメに似た鳥なのですが、巣のインパクトがすごい。何も知らないで下を歩いたら腰を抜かしそうです。
大きなくちばしを持つ理由
カワセミはセルリアンブルーの美しい色の鳥で、バードウォッチャーの憧れの的だ。
前述の巨大隕石衝突後、崖などに巣づくり場所を求めたのが、カワセミの仲間だ。巣は雨が入らないように、水辺の土手などの上方が下方より突き出ているところに、オスメス共同で穴を掘る。小さな体に見合わない、大きなくちばしがカワセミに備わっているのは、この巣づくりが関係している。太いくちばしをつるはしのようにして、土手に体当たりして掘り進んでいくのだ。
少し話は逸れるが、つるはしとはツルのくちばしという意味を持つ。これに限らずヘラサギ (英語名は White Spoonbill) やイスカの食い違ったくちばしなど、昔の人間は鳥のくちばしを模して、はしやスプーンなど様々な道具をつくったのだろう。
(p99)
絵で解説されたものを見ると、たしかにイスカのくちばしは缶切りみたいだし、ヘラサギのくちばしはスプーンみたい。
他にも、著者のお家のクリスマスリースの中にキセキレイが巣を作ってくれた話があって、とても羨ましく感じました。キセキレイがリースの内側の下のところにちょこんと座っちゃって、可愛すぎるでしょ。「ホバリングの様子が室内からよく観察できた。」とあり、鈴木先生は見るたびに幸せな気持ちになっただろうな、と思います。
寝る前の楽しみにちょっとずつ読んだのですが、卵を産む際に一生懸命巣を作っている鳥たちのことを考えると、その器用さと創意工夫に驚くとともに、いじらしくてなんだかこちらも元気づけられました。
鈴木先生の展覧会やワークショップでは、実際の鳥の巣を見られることもあるらしいので、チャンスがあれば行きたいなーと思っていたら、8月に東京ミッドタウンの中の「21-21デザインサイト」で展示があるそうなので、今からとても楽しみにしています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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