おはようございます、ゆまコロです。
あさのあつこ『透明な旅路と』を読みました。
あさの作品にしては孤独で内省的な描写が多く、『福音の少年』と少し似た感じがします。
自分の力だけで生きていけるようになりたかった。吉行明敬という人間にはりつき、のしかかってくるもの全部を捨てたかった。それが自由になるということだ。大人になることは自由になること。蘇生すること。頑なにそう信じていた時期があった。どれもこれも、的外れの夢想だったな。
大人=自由であること、なのかは、良くも悪くも大人になってみるとよく分かることだと思います。
もう一つ、好きな文章はこれです。
満月というには、わずかに欠けた月は、それでも皓々(こうこう)と地を照らし、光で包もうとする。分厚い雲の切れ間から降り注いでくる月光は、奇跡のように美しかった。
結局、ストーリーは進んでいるように見えていて、ふりだしに戻ったような感じで終わります。
読んでいるうちに、どこまでが現実なのかこちらも分からなくなってきます。
物語の軸であるように見える殺人事件も、途中で「殺人は起きていませんよ」などと言われ、かなりびっくりしました。
表紙のデザインは好きな感じです。
最後まで読んで下さってありがとうございました。