こんばんは、ゆまコロです。
チャールズ・ディケンズ、平井芳夫(訳)『クリスマス・カロル』を読みました。
「「あのちびのティム(事務員ボッブの末子。両足にギブスをはめている。)は、これからどうなるんでしょう?元気に生き続けられるんでしょうか?」
と、スクルージは心配になって、幽霊にたずねた。
「かわいそうだが、わたしには、あの子が死んで、持ち主のない松葉づえがだいじにしまってあるのが見える。」
「いけません!そ、そんなことを…。」
スクルージは必死に叫んだ。
「あの子は助かる―といってください。」
「だめだ。人間は、一度は死ぬことになっているんだ。どうせ死ぬなら、ああいう子に、長生きをさせて、苦しい思いをさせたくない。」
「でも、あんまりです。それではあの子がかわいそうすぎます。」
「それが運命というものさ。世間には、あの子より、もっともっとくだらない、悪い人間、たとえば、おまえのような者が、長生きをして、人を苦しめたり、悲しませたりしている。ほんとうなら、そういう者こそ早死にをしたらいいんだ。だが、わたしには、どうすることもできない。」
幽霊のことばに、スクルージは目を伏せた。」
この幽霊の言葉を読んだ時、「作者は、死について、なにか不平等な思いをした経験があったのかなあ」と思いました。
欲深く、冷たい性格のスクルージが、誰にも遊んでもらえなかった少年時代を過ごしたこと、そんな中でも親切にしてくれた妹は、体が弱く、息子を生んで亡くなったこと、好きな人よりも大事だと思って、お金を選んだことなど、だんだん明らかになっていくところが面白いです。
「人に笑われるのを気にしていたら、この世のなかで思いきったことは、なにひとつできないということを、とっくに承知だった」
そして、これからどうやって生きていけばいいのか?が彼なりに分かって変化していくところもとても良いと思いました。
読み終えると、素敵な新年を迎えられそうな予感がしてくる本です。
同じ作者が書いた『オリバー・ツイスト』よりも明るく、前向きな話だと思いました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。