今週のお題は「読書の秋」ということなので、私もひとつ紹介してみます。
チャールズ・ディケンズ、及川甚喜(訳)『オリバー・ツイスト』を読みました。
オリバーは両親を知らず、貧しい人々を救う収容所の中でもいじわるをされ、奉公に出された先でなにか良いことが起こるのかと思いきや、亡くなった母親のことを悪く言われ…。奉公先を飛びだして、一人でロンドンを目指します。
印象的だったのは、オリバーが悪党が置いて行った怖い本を開くシーンです。
「恐ろしい本だった。血なまぐさい大犯罪人の一生や、首切り台のことや、裁判の話などであった。本のページの中から、死人のうつろなつぶやきが聞こえてきそうに思われた。
オリバーは本をとじ、それ押しのけると、ひざまずいて神さまに祈った。じぶんが、この本の中にあるようなひどいことになりませんように、もしじぶんが、このようなことをしなければならないときは、神さまのお情けで、じぶんをただちに死なせてくださいますように…。オリバーは心をしずめ、さらに祈った。」
身近な人からの愛情を知らず、教育も受けてこなかったオリバーが敬虔で、他者への思いやりが強いことに、ちょっと意外な感じさえします。
その他の登場人物が個性的すぎて、あんまり目立たない主人公ですが、ここではオリバーの気持ちがよく出ていて、心に残りました。
主人公とローズ(オリバーのおば)に尽力してくれたナンシイ(敵の一味の情婦)が殺されるところと、オリバーに盗みをさせようとした窃盗団の頭・フェイギンが死刑になるところをオリバーが見に行くところなど、手厳しい展開が目白押しです。
これが、ディケンズが26歳の時の作品というのも凄いと思いました。
あまりホンワカした気分にはなれないけど、ドキドキしたい時にはいいかもしれません。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
(全集の中に収録されているものを読んだので、この訳者の本は見つかりませんでしたが、他の方の訳本のリンクを貼っておきます。)
- 作者: チャールズディケンズ,Charles Dickens,中村能三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/12/14
- メディア: 文庫
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