ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

カギは、機能運動性を高めること。『究極の疲れないカラダ』を読んで

こんばんは、ゆまコロです。

仲野広倫さんの『世界の最新医学が証明した究極の疲れないカラダ』を読みました。

 

平日、仕事をしながら「休日になったら、あれをしよう、ここに行こう」と考えているのに、いざお休みになると、疲れててもう別に何もしなくてもいいや…という状態によくなっています。

単に怠け者な性格なだけなのかもしれませんが、疲れに関してなにか打開策があれば嬉しいと思って本書を手に取りました。

 

著者は2021年東京五輪アメリカチームに帯同したスポーツカイロドクターです。

 

 私たちのカラダは毎日怪我をしている


    疲れにくい動けるカラダとは、どんなイメージがありますか?
     理科室にある骨格標本が自由自在に動くようなカラダを想像する人がいます。
     開脚や前屈ができるというのもそのイメージのひとつです。
    ストレッチや体操をして、180度開脚ができたり、前屈で地面に手がつくようになると、いかにもカラダが動くようになった気がします。
     しかし、必要以上に柔軟性を追求するとむしろ怪我のリスクが高まります。 ヨガインストラクターやプロダンサーは、カラダがやわらかすぎるために一般の人よりも故障しやすいのです。そもそも柔軟性は遺伝の要素もかなり強く、5歳児でもカラダの硬い子と柔らかい子がいます。
 疲れ知らずの動けるカラダをつくりたければ、毎日ストレッチをしても、ほとんど意味はありません。なぜなら、日々、歩いたり、階段を上がったり、走ったり。私たちの日常動作は、ストレッチの動きではないからです。

 生きて活動していれば毎日が怪我の連続です。久しぶりに階段を上がる、慣れない靴を履く、走る、長時間立ちっぱなしになる。このとき私たちのカラダは軟部組織(筋肉・靭帯)のマイナーテア、すなわち細かい筋繊維の故障、破れを起こしています。筋肉は負荷により疲労し、耐えられなくなると壊れます。
 すると、修復する際にかさぶたのような癒着、硬い状態がつくられます。 十分に回復しないと、筋肉が硬く、短く、弱くなるという負のサイクルが始まります。これが軟部組織の損傷が慢性化する大きな理由です。
 次に関節まで動きが制限されて、カラダは硬く動かなくなっていきます。 あぐらがかけないというのは、股関節が硬くなってしまっている症状です。
 そこで開脚できるように、股割りなどをおこなうわけですが、動けるカラダにはなりません。なぜなら、ストレッチは筋肉を長く伸ばすだけで、歩いたり走ったりするために必要な安定性やバランス感覚は鍛えられないからです。

 普段どおりの生活を送っていても、私たちのカラダは毎日疲労し、壊れては修復しての繰り返しだということを知ってください。
 だから、激しい運動は何もしていないのに「なぜか最近、椅子から立ち上がるのがおっくうになった」「階段を上がるのがつらい」「靴のへり方が左右異なる」 「つまずくことが多くなった(普段つまずかないところでつまずく)」といった、ちょっとした不具合は簡単に起こります。
 これは、機能運動性が衰えているサインです。機能運動性とは柔軟性(関節の可動域)、安定性(筋肉の強さ)、バランス(動きの協調性)の総合得点で、 カラダを動かしたいように動かせる能力です。一生動ける疲れ知らずのカラダをつくる鍵は機能運動性の向上にあると断言します。
 カラダはすぐにサボるので、普段使っていることにしか機能しなくなります。
猫背の人は前にばかり背骨を曲げているので後ろにそりにくくなります。毎日デスクワークをして、家に帰ってテレビを見て寝る生活。運動しないからではなく、同じ使い方しかしないから機能運動性がどんどん失われます。
 体力の衰えを実感するとは、機能運動性が落ちているのです。人間の機能運動性について、医学的見地から突き詰めている理論を機能運動医学 (Functional Performance Medicine) と言います。

 カラダのやわらかい人は、筋肉が伸びるように思います。しかし、筋膜や関節もよく動かなければ開脚はできるようになりません。筋肉、筋膜、関節の動きの総合点数で柔軟性は決まりますし、カラダのやわらかさは、筋肉よりも関節の動きのほうが大切です。たとえば、股関節自体が変形してしまえば、どれだけ筋肉が伸びても絶対に180度開脚はできません。
 機能運動医学から見れば、柔軟性において大事なのは、20歳前後の自分と比べて今はどうかです。昔は前屈で地面に手がついたのに、今は全然つかない人は、筋膜や関節の動きが制限されているので、ほかの部位に負担がかかっており、いつか故障を起こす可能性が高いと言えます。

(p20)

 

「疲れ知らずの動けるカラダをつくりたければ、毎日ストレッチをしても、ほとんど意味はありません。」

すっごく眠くても、毎晩寝る前に結構頑張って腰とか背中を伸ばすストレッチをしていたというのに。序章からえぇ〜という感じになりました。

ただ、体力の衰え=機能運動性の低下という話は分かりやすいと思いました。

過去に、特に何にもしていないのに腰が痛くなった、ということがありましたが、「同じ使い方しかしていないから機能運動性」が失われた結果だったのだと思えば、別に何の不思議もなかったわけです。

 

 裏を返せば、運動をしていない人ほどチャンスなのです。たとえば35歳で何も運動していない人が、週1回のランニングを欠かさずに続けるようになれば必ず心肺機能が高まって疲れにくくなりますし、足も速くなります。
 使われていなかったカラダの機能運動性が上がるため、35歳のときよりも40歳のほうが元気なカラダになっていると言えます。老化は進んでもカラダは若返らせることができます。患者さんにも必ずお伝えしていることです。

 衰え知らずのカラダづくりのために、するべきことはそれほど多くはありません。先に述べたバランスのよい食事と十分な睡眠。たばこは吸わない。お酒は飲みすぎない。ストレス過多の生活を送らない。これが基本です。
 運動はプラスアルファです。どれだけ運動しても、たばこを吸って悪い食生活を送っていれば、衰えは早いでしょう。

 効果的な運動とは、有酸素運動とストレングスコンディショニング(筋力トレーニング)です。 これはさまざまな団体が「ポジションペーパー」を出していて、議論に決着がついています。
 ポジションペーパーとは多数のエビデンスを何十、何百と見直してつくるガイドラインです。ひとつの記事や調査などとは比べ物にならない重みをもちます。
 アメリカ疾病管理予防センターでは、中程度の有酸素運動(Moderate-intensity aerobic activity:10点満点中5~6点の強度でおこなうトレーニング)を1週間に150分と、カラダのおもな部位をすべて使った週に2回以上の筋肉トレーニングを推奨しています。
 これは6つの大きなリサーチとアンケートを組み合わせて分析され、21歳から98歳までの661137人を対象に、1年間の死亡者と運動量の関係を調べた大規模な調査の結果からです。
 ガイドライン以下の運動しかしていない人でもまったく運動をしない人に比べて死亡率は20パーセント低く、ガイドラインどおりにこなした人は31パーセント、3倍の1週間に450分をこなした人はまったくしなかった人よりも39パーセントも死亡率が低くなっています。
 それ以上はあまり変わらず、ガイドラインの10倍(1日3時間半)運動しても、450分こなしたグループと結果はほぼ同じでした。 多少運動量が多いくらいでは早死にならないので、どんどん運動するべきと言えます。日々の運動がどれだけ大切かわかるリサーチです。

    ただ、これはガイドラインであって面白味がありません。わたしはできるだけいろいろなスポーツを週に150分以上楽しめばよいと思っています。
(p34)

 

有酸素運動と筋力トレーニング、やはりこの2つは欠かせないようですね。

「できるだけいろいろなスポーツを週に150分以上楽しめばよい」とあるように、気負わず、しかし軽く考えずに、継続することが大切なように思いました。

「老化は進んでもカラダは若返らせることができます。」という言葉に勇気づけられます。

 

Q.年齢、性別、体重がまったく同じとき、どのタイプにいちばん腰痛が見られるでしょうか?
①姿勢の良い人
②姿勢の悪い人

 

 正解は「どちらとも言えない」です。よく姿勢の悪い人が腰痛を起こしやすいと思われがちです。 これは間違いです。
 姿勢と痛みの関係にもいろいろなリサーチがあります。あるリサーチでは腰痛のある人とない人(計36名)の写真を、カイロプラクター、理学療法士理学療法専門医、リウマチ専門医、整形外科医ら23名が、「正常、増加、低下」の3つで姿勢(横から見た首のカーブ、腰のカーブ)を判定した結果、姿勢に対する見立てはほぼ全員が一致するものの、痛みの有無には関連がないことが明らかになりました。
 そり腰だろうが、猫背だろうが、どれだけ姿勢が良かろうが痛い人は痛い、痛くない人は痛くないのです。
 しかしここでややこしいのが、悪い姿勢だと故障しやすいのです。 猫背で座る。腰を曲げて荷物を抱える。足を組んでだらっと座る。こうした姿勢は腰、首の椎間板に負担をかけるため、故障を起こしやすい、つまり怪我のメカニズムと同じなのです。
 ですから、もし腰痛患者の姿勢が悪ければ、姿勢の改善を図ります。ただ、医者が「あなたは姿勢が悪いので、将来腰痛になります」と予言したら嘘になります。これが痛みと姿勢の関係です。
 痛みの原因は姿勢や骨の歪みではなくディスファンクション (Disfunction)、機能障害です。ではそれですべての説明がつくかと言えば、それほど甘くはありません。痛みは、年収、学歴、性別、職業、飲酒、肥満、喫煙などとの相関が、さまざまな角度から研究されています。
 とくにたばこと痛みの関係は1980年代から調査されていて、それだけで1冊に収まりきらない情報量があります。
 慢性的な痛みを首、腰に一生抱える人と喫煙率との関係は非常に高いことがわかっていて、さらに頭痛、線維筋痛症、慢性関節性リウマチといった症状とも相関関係が見られます。 今すぐ禁煙をするのに十分説得力のあるリサーチです。

 ニコチンには一時的に痛みを抑える働きがあるものの、喫煙者のほうが痛みの感じ方が強いとのデータも出ています。 血液循環が悪くなるというのも一理ありますが、脳の神経伝達物質や回路にニコチンが影響して痛みにつながるようです。
「姿勢と痛みは関係ない」のは痛みを感じるのは脳だからであり、喫煙はその痛みを感知する認識システムに問題を起こすと言われています。
 また、痛みの強さとニコチンの量、 つまり中毒性のひどい人ほど痛みは増すという研究もあります。

(p42)

 

「悪い姿勢だと故障しやすい」が、姿勢が悪いからと言って腰痛が起こるとは限らないというのが少し意外でした。だからといって、姿勢悪くしている理由もないわけですが。

「慢性的な痛みを首、腰に一生抱える人と喫煙率との関係は非常に高い」というデータが怖いです。

 

    スマホはパソコンよりも画面が小さいので1ヵ所に視線が集中し、首をサポートする後頭下筋に負荷がかかります。腕を動かすよりも、水平に上げたまま固定したほうがつらいのと同じ理屈です。 1ヵ所の小さな画面を凝視することは、目だけでなく首の筋肉にとってもたいへん疲れる行動なのです。
 仕事量 ×時間=負荷になります。仕事量(重さ)が増えても、時間が長くても負荷は大きくなります。

 姿勢の悪い座り方なども同じ理由で首の筋肉損傷につながります。激しい運動をしていなくても、日常の何気ない動作で知らないあいだにカラダを酷使しているかもしれません。機能障害は生活習慣から起こります。
 そこで機能運動性の低下をチェックする項目をつくってみました。ご自身が当てはまっていないかテストしてみてください。


機能障害の予備軍チェックリスト
□椅子から立ち上がれない
□姿勢が悪くなったと言われる
□ 疲れやすい
□ ひざ・腰などに重みを感じる
□若い人の歩くスピードについていけない
□電車に乗るとき、ホームとの空いている間隔が恐い
エスカレーターにスムーズに乗れない
□階段を上がると疲れる
□車を降りるときに足が上がりにくい
□過去1年以上運動をしていない
□電車の椅子にすぐ座りたくなる
□スタンディングデスクは疲れるから使えない
□座っているだけで腰が痛い
□ 歩くとき慎重に一歩を踏み出すようになった

□歩行中に人とぶつかったり転びやすくなった
□買い物の荷物を持って帰るのがつらくなった
□つま先立ちができない
□手を使わずに床から立てない
□靴ひもを結んだり、靴下をはくのがつらい
□片足だとズボンが履けない
□靴の片方だけが極端に減り出した
□足を組まないと座れない
□まっすぐ背中を伸ばして座れない
□ 和式トイレがつらくて使えなくなった
□ あぐらをかけない
□ 体育座りができない

※チェックが多いほど機能運動性が低下しています

(p85)

 

「疲れやすい」、「電車の椅子にすぐ座りたくなる」はものすごく当てはまります。

「激しい運動をしていなくても、日常の何気ない動作で知らないあいだにカラダを酷使しているかもしれません。機能障害は生活習慣から起こります。」

スマホをじっと見る動作だけで首に負担がかかっているのだから、特に何にも気を使わず生活していたら、知らずしらずのうちにカラダに負荷をかけていたということはたくさんありそうです。体育座りなんて大人になってから日常でほとんどしないし、和式トイレに遭遇する機会も減りました。

 

5章の、「ちょっとヘンな日本人の健康常識」という項目が、割と自分の予想と違う回答であれっと思いました。例えば、水泳と骨密度に関する問いについて。

 

Q.長年、運動をしていなかった人が骨粗しょう症の予防として始めるべき運動はどちらでしょうか?
①カラダへの負荷が軽い水泳
②重りを持った筋トレ

 

 水泳は骨密度を減らす運動!?


 毎日歩いている人と毎日寝てばかりいる人がいるとしたら、歩いている人は翌日も歩ける可能性が高く、寝ている人は寝ることにしか機能運動性を発揮していないわけですから、翌日は立てなくなる可能性が高くなります。
 もし毎日寝てばかりいる人がいれば、まずは起き上がって立っている時間を増やすことからおすすめします。赤ん坊の成長過程を見ればわかるとおり、寝るというのはいちばん低い機能運動性でできる行動です。
 もう少し健康意識が高く、週に何回かプールに通われている人もたくさんいると思います。しかし、水泳や自転車は骨にインパクトを与えないので、怪我をしにくい競技であるものの、骨密度を維持することはできないどころか減らす可能性もあります。

 骨密度はたいへん重要です。これが低くなると股関節、背骨だけではなく身体中が骨折しやすい恐ろしい状態になってしまいます。
 骨粗しょう症の人が転倒して骨折、入院すると、その寝たきり生活でさらに骨密度を減らしてしまい、骨折しやすくなってしまうのです。
 ウルフの法則 (Wolff's law) といって、骨も筋肉と同じように負荷をかけなければ強くなりません。無重力の宇宙空間で長くいると筋力が衰えて、カラダを支えられなくなるのと同じです。骨も重力を感じない運動では強くなりません。
 また、関節の老化によって起こす変形性関節症を治す手術もありますが骨粗しょう症が進むとこれも難しくなってしまいます。新しい関節のベースとなる骨自体が壊れやすくなっているからです。
 骨粗しょう症の予防にはレジスタンス(ウエイト)、重力をかけるトレーニングが絶対で、これをなくして老化の予防はできないのです。

 残念ながら骨量は30歳をピークにして減るばかりです。それまでに食生活や運動によっていかに骨密度の貯金がされているかが重要です。
 私たちが若いアスリートの診療でもっとも気をつけているのは食生活です。とくに体操選手やダンサーなどは体重を気にして食事をカットするので、骨密度を計測して将来のための食事指導をします。30歳がピークですから、それまでにいかに骨をつくって蓄えられるかに掛かっています。

 減るスピードをいかに遅らせることができるか、そのためには食事とトレーニングしかありません。
 水泳のよいことは怪我をしにくい運動だということです。 水中歩行をすると腰痛がラクになる人はいます。ただ、ずっと続けてもそれ以上は強くなりません。さっさと陸地に上がって重力に対抗できるようにならなければなりません。
 わたしもサーフィンのトレーニングがてら週に2回は水泳をトレーニングに入れています。ただ、加えてランニング、バイク、筋トレを組み合わせています。動けるようになったらどんどん負荷を上げていきます。

 日光にあたりビタミンDを合成すること、カルシウムの摂取と自分の体重を使ったトレーニングも必要です。ビタミンDは太陽の光に当たらないとつくられないので日に当たるようにしましょう。 肌を守ることも大切ですが、 日焼け止めを塗ると効果はなくなります。 肌を焼かない程度に日光に当たってください。
 足りない人はサプリメントも有効です。 冬のニューヨークは日照時間が短く、寒くて肌を露出できないので、全員にビタミンDサプリメントをおすすめしています。血中のビタミンD数値が知りたい方は病院の血液検査で簡単に調べられます。
 カルシウムと言えば牛乳を思い浮かべる方が多いと思いますが、牛乳の摂取量と骨折のリスクが関係ないことを証明するデータもあり、牛乳大国のアメリカでさえ「牛乳離れ」が進んでいます。カルシウムとビタミンDは骨の形成にたいへん重要です。カルシウムについて日本食は小魚などで摂取できますし、食事で摂りにくい場合はサプリメントも有効です。

(p195)

 

「骨量は30歳をピークにして減るばかりです。それまでに食生活や運動によっていかに骨密度の貯金がされているかが重要です。」

学生時代に特に何も運動をしてこなかった私にとって、悲報以外の何物でもない言葉ですが、でも遅きに失するからといって、何もしないでいいということにはならないし。

血中のビタミンD数値は今度測ってみたいと思います。

 

Q.病院でレントゲンを撮ってもらうと、医者から「関節が変形しているので治らない」と言われました。あきらめるしかないのでしょうか?

①YES

②NO

 

 そろそろ画像診断神話から抜け出しましょう


 レントゲン・MRIなどの画像診断が症状と関係しないことや、薬や注射で腰痛が治らないことは最近では浸透してきました。
 わたしも毎週何度も画像診断をおこなっています。 症状によって画像診断は筋肉骨格系の診療になくてはならないものです。
 しかし、レントゲンやMRIの結果が痛みに結びつかないことが多くあります。また基本的に慢性痛の画像診断の"見た目”は今後よくなることはありません。
 これが病院で言われる「治らない」 のほんとうの意味です。 医者も「症状が治らない」とは言っていないのです。
 画像の見た目が症状と一致するとは限りません。治らないと医者に言われても落ち込まずに、"画像の見た目"が治らないのか”症状”が治らないのかをはっきりさせましょう。

 まったく症状の出ていない男性50人、女性48人の腰椎をMRIで調べた結果、すべての腰椎椎間板で正常な状態だと診断されたのは、たったの36パーセントでした。52パーセントの人には最低でも1つの椎間板に問題があり、27パーセントの人には椎間板の突出がありました。この傾向は年齢とともに増加します。
 日本でも似たような研究が2009年に35歳から50歳の200人を対象におこなわれました。半分の人の腰椎椎間板に損傷があり、25パーセントの人に椎間板ヘルニアがありました。
 この人たちがある日腰痛を訴えて病院に駆け込めば、腰椎椎間板ヘルニアという手術の対象になる診断が下ります。画像診断がいかに間違えた結果を招くかがわかっていただけると思います。
 これらはもうかれこれ20年以上も前から常識的に知られている話です。股関節の関節唇損傷、ひざ関節の半月板損傷、頚椎の椎間板、肩関節のローテーターカフの損傷……。あらゆる部位ですべて同じようなリサーチがおこなわれて、似たような結果が出ています。
 では、どうやって検査をすればいいのでしょうか?
 わたしは初回診療の場合は少なくとも20分は問診をおこない、さまざまな情報を収集します。たとえば腰痛を訴える患者さんが、最近急に体重が減った、夜中に痛くて目が覚める、尿の出が悪いなどの症状がある場合は、内臓疾患が痛みの原因の可能性があります。
 また、生活習慣、既往歴、運動歴などに原因が隠れていることもあるので質問します。問診はそれだけで8割近くの問題が見つかる非常に有効な検査です。
 ゴルフやウォーキング、テニスをしていて腰を傷めたという人は、スポーツが原因というよりは、体幹(胴体)が弱くてカラダの安定感がない、背骨の関節がうまく動いていない、筋肉が損傷しているなど、カラダの状態に問題のあることが多く見受けらます。

(p221)

 

「ゴルフやウォーキング、テニスをしていて腰を傷めたという人は、スポーツが原因というよりは、体幹(胴体)が弱くてカラダの安定感がない、背骨の関節がうまく動いていない、筋肉が損傷しているなど、カラダの状態に問題のあることが多く見受けらます。」

30歳を過ぎてテニスを始めたばかりの頃、しょっちゅう腰を痛めていましたが、私は「体幹(胴体)が弱くてカラダの安定感がない」ことが原因だったのかなと思います。

 

本書では、機能運動性を高めるエクササイズの他に、デスクワークの時の姿勢や、正しい寝る姿勢についても解説されています。

「テニスや野球はたしかに回旋動作が入ります。だから禁止したほうがいいのではなく、テニスを楽しみたいときのために、普段から正しい腰の使い方で負担をかけないようにしておくのです。(p105)」

何度もぎっくり腰を経験している身としては、これはしっかり肝に銘じたいと思います。

 

Q.症状とうまく付き合っていくしかないと診断されたときに取るべき選択肢は
どちらでしょうか?
①医者の言うとおり、ほかの腰痛患者と同様に何年も病院通いを続ける
②自分なりに症状を調べて医者に質問しながら来院目的を明確にする

 

 自分の症状を自分でよくできないなんてナンセンス

 

 アメリカには風邪を引いた患者さんが病院へ行けずに亡くなってしまうような最悪の医療も、ドバイから大金持ちがプライベートジェット機を飛ばして手術を受けに来るような最先端の医療も存在します。
 医療も実力主義自由診療で医者が治療費を決めるので医者、病院によって治療費には差があります。日本のように医療が安い値段で受けられて当然との認識はまったくなく、カラダの不調は自己責任であり医療費は高いものと認識されています。病気になって入院し、医療費が払えずに自己破産せざるを得ない人がいるほどです。
 カラダの不調は自己責任だという意識は極めて高く、保険でカバーされない領域におよべば治療費も高額であることを認識されています。

 ですから、症状についてもよく学んで来られますし、医者や医療を自分で選んで来ます。こちらの説明も納得するまで聞いてきます。「大丈夫でしょう」という表現で帰ってくれる人はなかなかいません。
 たとえば腰痛で来られた方には「デスクワークが続き股関節の動きが低下したことで股関節の動きが制限され、伸展機能が落ちているために骨盤の前傾が慢性的にある。結果として腰を支える脊柱起立筋群が日常生活で必要以上に働かされることになり、筋肉が疲労して腰痛につながったため、股関節からの機能運動性を治療して、生活を変えつつ体幹のトレーニングをおこなう必要があります。筋肉の症状なのでレントゲンの必要はありません。 数回の治療で改善しない場合は関節の変性などを調べるためにレントゲンを撮りましょう」とかなり詳しい説明を求められます。
 一般的に日本人は「腰の筋肉が張っているので腰痛です」で納得してしまう傾向があります。「首の痛み」も「デスクワークが長いので」「寝違い」で、日本人は納得してくれますが、アメリカ人は「デスクワークで胸椎が後弯、頭が前に突出する姿勢を長く続けることによって、頚椎の深屈筋群が働かなくなり、斜角筋、胸鎖乳突筋、上部僧帽筋が過度に緊張する『アッパークロスシンドローム(Upper cross syndromes)』 を起こしています。これらの機能運動性を元に戻す使い方、治療、トレーニングが必要です」と具体的に説明してはじめて納得して治療を受ける姿勢をもってくれます。
 診断名がはっきりと伝えられることも絶対に必要です。 ひざの痛みではなく「半月板損傷」ですし、筋肉の怪我ではなく「ハムストリングスのグレード2損傷」と言った具合です。曖昧な表現は通用しません。
 これはわたしの専門分野に限らず医療機関に共通で、日本に滞在するアメリカ人はできるだけ本国に帰国して病院に行くのは有名な話です。 アメリカの医療費はおそらく世界一高額で日本の倍どころの金額ではありませんが、医療にはっきりとした結論を求めるアメリカ人の気質を表しています。

(p231)

 

「カラダの不調は自己責任であり医療費は高いものと認識されています。」

安い値段で医療が受けられて幸せと思っていましたが、不調は自己責任という意識は確かに低かったかもしれません。

健康への投資は本当に大切、という感覚が日本人には欠落している、という著者の言葉にしゅんとなってしまいました。

 

 私たちがアメリカでおこなう診療は、医学的な診断に基づく副作用の少ない治療法です。現代のリサーチ、EBM(科学的根拠に基づく治療)を追求しているため、医師、理学療法などの分野を問わず治療法が似たものになってきます。
 対して日本では診断、画像診断が病院でしかできません。しかしながら整形外科などで効果の高い徒手療法、最新の機能運動性トレーニングなどをおこなう機関をわたしはまだ知りません。
 また日本の保険診療をおこなう医療機関では治療内容が保険点数によって決まっているのでどの医療機関で治療を受けても、ベテラン医師が時間をかけて診療しても、そうでない医師が短時間で診療しても同じ治療費しか請求できません。これは新しくよい医療を取り込む際に、非常に大きな足枷となってしまいます。

(p268)

 

「ベテラン医師が時間をかけて診療しても、そうでない医師が短時間で診療しても同じ治療費しか請求できません。これは新しくよい医療を取り込む際に、非常に大きな足枷となってしまいます。」

日本で受けられる医療しか知らなければ疑問に感じることもないのかもしれませんが、このような弊害もあるのかと思いました。

 

ぶっちゃけ「運動前のストレッチはパフォーマンスを下げる」とか、良かれと思っていたことがそうではなかった、ということが判明してちょっと混乱しました。

ただ、疲れにくいカラダには機能運動性の向上が必須であること。これが分かっただけでも良かったかなと思います。

片足立ち筋肉リリースとかは難しくないので、続けてみたいと思います。

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。