おはようございます、ゆまコロです。
斉藤洋『生きつづけるキキ―ひとつの『魔女の宅急便』論―』を読みました。
『魔女の宅急便』シリーズが完結してしまい、寂しさを感じていたので、手に取りました。
そうしたら、大好きな『ルドルフとイッパイアッテナ』の作者・斉藤洋さんが書いていて、あれっと思いました。
斉藤洋さんから見た、『魔女の宅急便』の各章の盛り上がり、作家の狙いなどが考察されていて、面白いです。あらためて、原作の良さを味わえます。
今回、『魔女の宅急便』が引用されていて、やっぱりいいなと思ったのはこれです。
「この第五章、<キキ、一大事にあう>はこの救出劇で終わりではない。このあと、キキはほうきをすりかえた犯人をつきとめる。犯人の少年はキキのほうきを使って飛ぼうとし、ほうきをこわしてしまっている。
あやまる少年に、キキは…。「しかたないわ」
キキはかすれた声でやっといいました。いやだっていってもしょうがないもの、と思いながら、あふれてきそうななみだを、胸の中におしもどしました。
「あたし、自分でほうきをつくることにする。前にもつくったことあるから、たぶん、だいじょうぶよ。はじめっから、このほうきみたいにいくとは思わないけど…なんとか乗りこなしてみせるわよ」(p116以下)
このせりふは、文字どおり命がけで小さな男の子を荒波から救出したあとだけに、説得力が大きい。
キキはこの章で人命救助という、これまでにない大仕事をし、さらに、ほうきを盗んでこわした犯人を許すという寛容さを見せ、しかも、母のほうきでない新しいほうきを作り、それで飛行するという決意をする。」(p51)
それと、キキとトンボさんの関係に関する検証も好きです。
「「キキってさ、空を飛ぶせいかな、さばさばしてて、ぼく、気らくでいいや。女の子っていう気がしないもんな。なんでも話せるし」(p130)
たしかに、こう言われたら、少女はいらいらするだろう。すべての少女がそうだとは言えないとしても、多くの少女は、
「女の子っていう気がしない」
と言われれば、いらいらするに違いない。男性の側から見ると、どうしてこの少年はこういうことを言ってしまうのかなと、溜息が出そうになる。
しかも、交際関係に入るかもしれない少女に、
「ぼく、気らくでいいや」
とは何をかいわんやである。おまえ、女性に対して気楽さを求めているのかと、憤りたくなる男性読者も多いだろう。しかし、相手の少女を好きなくせに、こういうことを言ってしまう少年は多いのだろう。だからこそ、読者、特に少女の読者はここでキキに共感できるのだ。」(p63)
巻末に、本書の著者が不要と称した角野栄子さんとの対談があるのですが、同じ話題を扱っているようで何となく話がかみ合ってない感が面白かったです。
自分と似た部分がある、と言われて、角野先生が「複雑な気持ちです(笑)。」と答えているのが可愛い。
あと、斉藤洋さんがつまらない本は最後まで読まなくてもいいと主張しているのがちょっと嬉しかったです。
『ルドルフ』シリーズの最新作が出ることも分かり、今から楽しみです。
最後まで読んで下さってありがとうございました。