おはようございます、ゆまコロです。
以前に、この本の続刊の感想を書いたのですが、ついでに前の巻もさかのぼってみます。
この巻では、キキに女の子と男の子の双子の子どもが出来て、彼らが13歳を迎えるまでの様子が書かれています。
「トトとニニが生まれたとき、キキは町中を歩いて、まだ目もあかない黒猫の赤ちゃんを二匹探してゆずりうけてきました。だれが魔女になるならないに関係なく、これは魔女の家に子どもが生まれたときの決まりなのでした。ほんとうは将来の魔女候補である、ニニのための猫だけでもよかったのです。でもキキはいっしょに生まれてきたトトもおなじように育てていきたいと思ったのでした。トトの猫は雌で名前はベベ、ニニの猫は雄で名前はブブとつけられました。トトにとってもニニにとっても、今はまだふつうの猫です。
キキとジジのように、魔女言葉がはっきりと生まれてくるのは、たぶん、それは女の子であるニニが魔女になると決めたときでしょう。気持ちがなければ、なんにも生まれてきません。不思議も…魔法も…です。」
「気持ちがなければ、なんにも生まれてきません。」というところに、重みを感じました。角野先生の信念のようなものが垣間見えるようです。
実際に双子の姉・ニニが13歳になって旅立ちを迎えるときは、読んでいるこっちも母親であるキキと一緒に、不安と期待で胸がいっぱいになりました。
将来がなんとなく決まっている姉・ニニとは対照的に、差を付けられ悩む弟・トトの書かれ方も良いです。
彼の立場は本当にいろいろな面ですごく悩むだろうな、と想像するのですが、それでも彼が、自分はどうしたいか?を模索する姿が良かったです。
「キキは、十歳のとき魔女になろうと自分で決めた日のことを思い出しました。
(コキリさんにいわれたからじゃない。自分で決めたのだ)と思ったとき、一瞬、びりりと体中に恐ろしさが走りました。でもその後、自分で決めたのだというよろこびがあふれてきたのです。そしてはじめてコキリさんと、空を飛ぶ練習をしたとき、はっきりと、魔女になるうれしさを感じたのです。それから、自分のほうきを作ろう、かわいい形のほうきを作ろう。旅立ちの日に着る洋服は…どんな町にいこうか…つぎつぎこれからおこるたのしいことを想像して、贈り物をあけるときのような、わくわくした気持ちになったのでした。そしてはじめて、ジジがこれからの時間をともにする、かけがえのない仲間だと知ったのでした。
自分で決めたときの、あのふるえるような一瞬を、キキはニニにも、トトにも味わってほしいと心から思いました。これがなければなんにも始まらないでしょう。
とんぼさんがいっていた「あきないほどおもしろいものを見つける」という言葉の意味はこのことだったのでしょう。
魔女の世界でも、「魔女になるか、ならないかは、自分で決めること」といわれています。昔はそうではありませんでした。魔女の子は魔女になると決まっていたのです。でもこの考えは、かわってきました。よろこびを感じなければ、意味がない、また本物の魔法も生まれてこないと考えるようになってきたのです。」
魔女の宅急便のシリーズで、この本が一番好きです。
素敵なシリーズを長く続けて下さった角野先生に、ありがとうございますという気持ちです。
最後まで読んで下さってありがとうございました。