おはようございます、ゆまコロです。
斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』を読みました。
東京にやってきたばかりのルドルフと、その帰りを待つ飼い主のリエちゃん。
もう結末は知っているわけなのですが、この頃の二人の事を考えるだけで、なんとなく胸が痛くなります。
東京にやってきたばかりの頃、ルドルフが知り合う優しいおばあさんが好きです。
「そこにいたのは、リエちゃんではなかった。おばあさんだった。ぼくはねむりこんで、ゆめを見たんだ。急に悲しくなった。起きたばかりの、まだはっきりしない頭で、ほんとうにあの町に帰れないんじゃないかと思った。たぶん、もうむりなんだろう。一生東京でくらしていくしかないんだ。
そんなふうに考えていると、
「おまえ、どこかの飼いねこだったんだろ。どうしたんだい。おうちに帰れなくなっちゃったのかい。もしよかったら、うちのねこになってもいいんだよ。こう見えても、おまえひとりくらい、飼ってやれるんだから。」
と、おばあさんが、ぼくのせなかをなでていった。
ぼくは、おばあさんのことばがとってもうれしかったけれど、この家のねこになったんじゃ、いまごろ、きっと心配しているリエちゃんに悪いような気がして、立ちあがり、木のとびらのほうに歩いた。
「そうかい。もう帰るかい。またおいで。牛乳はいつでもあるからね。」」
こういうことで、諦めかけていた気持ちを考え直すことって、ありますよね。
1巻で好きなのは、ルドルフがイッパイアッテナに怒られるシーンです。
「「ルド。おれは、まえからおまえにいおうと思ってたんだけどな。おまえ、このごろ、ことばがきたなくなったんじゃないか。そりゃあ、おれといつもいっしょにいるから、半分はおれのせいかもしれない。でも、なんでもかんでも、おれのまねをすりゃあいいってもんじゃない。ことばを乱暴にしたり、下品にしたりするとな、しぜんに心も乱暴になったり、下品になってしまうもんだ。
ノラねこで生きていくんだから、そうそうお高くとまってもいられねえ。でもな、おまえ、いつか自分の家に帰りたいんだろ。飼いねこにもどりたいんだろ。そんな下品になっちゃったねこを、おまえのリエちゃんがよろこぶとでも思ってるのかよ。え、どうなんだ。」
リエちゃんの名まえを出されて、ただでさえ、イッパイアッテナにぶたれて悲しくなってるのに、ぼくはますます悲しくなり、目がしらがあつくなってきてしまった。
リエちゃんのお母さんは、よくぼくをだっこして、
「ねえ、うちのねこ、品があるやろ」
って、じまんしたものだった。このごろ、ぼくは、そんなに下品になっちゃったのだろうか。そういわれてみれば、ことばづかいも、ずいぶん変わったみたいだ。」
あと好きなのは、後半、イッパイアッテナに褒められるシーン。
「「おれもすこしは苦労したってわけよ。」
といい、それから声を明るくし、
「そりゃあ、おまえがまよいねこで、なんとなくおれと立場が似ていたから、最初はがらにもなく同情して、めんどうを見てたんだけどな。そのうち、おまえってやつが好きになってな。それで、いっしょにくらしてるってわけだ。おまえは、いつでも明るくって、ほかのやつをおしのけて、自分だけいい思いをしようってところがぜんぜんない。おまえといっしょにいると、心があらわれるような気持ちがするぜ。」
と、てれくさそうにわらった。」
これでルドルフシリーズは4巻読破です。
最後まで読んで下さってありがとうございました。