おはようございます、ゆまコロです。
著者のファンである友人に貸してもらいました。
好きな場面は、主人公・佐和子さんとその彼氏が一緒に帰るシーンでのこの会話です。
「この自転車を押して帰る俺と、迎えに来てもらう俺とどっちがかっこいいと思う?」
そういうことをいちいち聞くところが何ともかっこ悪い。私はそう思ったけど、
「自転車を押して帰ったら男らしいと思うし、迎えに来てもらったら、臨機応変に判断できる賢い人だと思うよ」
と寛大に答えてあげた。
佐和子さんと大浦くんのほのぼのとしたやり取りが癒されます。
このシーンも好きです。
「大浦君」
私は窓を開けて、そっと呼んでみた。外はしんとして思ったより声が響いた。
「おお」
大浦君は私に気づくと顔を上げ、にっこり笑った。いつもの顔。大浦君は小さいことでも本当に嬉しそうに笑う。そういう顔を見てると、私は本当に大浦君のことが好きなんだってわかる。
ほんわかするだけに、この後二人に起こる出来事には読んでいるこちらも打ちのめされます。
「学校に行かなくてはいけない」ということが、私を立たせてくれる。でも、運悪く今は冬休みだ。何の縛りもない。私は好きなだけ悲しみに暮れていられる。自由な時間は全て大浦君のことを考えることに使われてしまう。それは不幸だ。
本当はこういう時は、徹底的に悲しみに暮れたほうがいいのではないかという気もしますが、こういう状態になって不幸なのは、自分だけではない、と佐和子さんが頭のどこかで分かっているようなニュアンスが伝わってきます。
「父さんはさ、死にたかったのに、失敗してずっと生きてる。だけど、大浦君は死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ。そんなの不公平だよ」
…(中略)
「かわいそうに」
しばらくして直ちゃんが言った。
「そんなことを言うほど、佐和子は傷ついてるんだね」
ここに出てくる直ちゃんもそうなのですが、大浦君がいなくなった後、周りの人たちが佐和子さんにとても優しいのが心に残ります。
私は突然ヨシコにシュークリームをプレゼントされ、ますます首をかしげた。
「全然違うってわかってるんだよ。でも、他に方法が分からないんだ。あんたがどうしたらいいかわかんないように、私はもっとどうしたらあんたが元気になってくれるかわかんないから…」
身近な人が悲しみに打ちひしがれているときに何をすべきかのヒント、とまではいかないかもしれませんが、失意の中で人はどんなことに心を動かされるのか、という感情に寄り添うには良い本だと思いました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。