ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

シェリー・ベネット『ラーラはただのデブ』

おはようございます、ゆまコロです。

 

シェリー・ベネット、中谷ハルナ(訳)『ラーラはただのデブ』を読みました。

 

同じ職場の女性が面白がって読んでいたので、借りてみました。

すごいタイトルだな、と思って開いたのですが、中身もなかなかインパクトがありました。

 

「痩身=美」だと思っている女の子が、どんどん太り始めるお話です。

見た目が変わったら、周りの人の接し方はどう変わるのか、ということとともに、自分がこれまで何を基準に、他の人を評価していたのか、ということも白日の下に晒される事態になってきます。

 

ただ、ラーラの弟スコットだけは、見た目に振り回されることを最初から好ましく思っていないようです。

 

 

「ここんちの家族はみんな、ものごとの本質より、外側の見た目ばっかり気にしてるってこと!」

 

 

スコットは物語の序盤から真理を語っているようなのですが、そんな彼も、どんどん変わる姉の姿には自分のスタンスを保てなくなります。

やっぱりな、と思うとともに、ほっとするところでもあります。

 

自分は他人を容姿で判断していない、と思っていたラーラは、友人からこんな言葉を浴びせられます。

 

 

「ほらね、それがそもそものまちがいなのよ。…おデブのパティって、ほんとにほんとうにかわいそー、なんて心の中で思って、いい人になった気分でいたわけ。彼女を慰めてあげて、力になって、体重を減らすのを手伝ってあげよう、なんてね。あなたって最高にうぬぼれてたわよね?私に感謝されて当然だと思っていたはず。そんなふうだから、私は誰よりもあなたが嫌いだった。」

 

 

こういう、「相手はこう思うだろう」と思って行動したことが、相手を傷つけることってよくあると思います。面と向かって言われるとショックですが、でも “そういう行為は嫌い” と言われる方が、知らずにいるよりマシな気がします。

もう一つ、自分が太ってからのラーラの言葉も辛い。

 

 

気にしない、というのは気持ちがいい。私はいまでもしょっちゅう人の気持ちを気にかけるから、よけいにそう思う。…彼らの目の前に太った体をさらすという罪を犯した私に、罰を与える権利があるとでも思ってるの?

 

 

この本で出てくる、注射針の打ちまわしからAIDSに感染した医師が、セックスで感染した人より自分の方が偉いと思っている、という例えが痛烈だと思いました。

 

いじめや偏見や差別や、誰かを見下すことや、優劣をつけることなど、しんどい話題が目白押しなのですが、読み終わると、どこかすっとするような、妙な爽快感があります。

入って行きやすい物語だからかもしれません。

面白かったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

ラーラはただのデブ (集英社文庫)

ラーラはただのデブ (集英社文庫)