ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

ロバート・バランタイン『名犬クルーソー』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ロバート・バランタイン、白木茂(訳)、藤原一生(文)『名犬クルーソー』を読みました。

 

文学全集のイギリス編の中に収録されていたお話です。書かれたのは1860~1861年ころとのこと。

なのですが、読んでいると物語では馬に乗ったり狩りをしたりといった様子が出てきて、「あれ?これイギリスの話なの?」みたいな印象を受けます。

 

作者はエジンバラの出身で、アメリカへの憧れが強く、16歳の時に単身カナダへ行って毛皮会社で働いたという経歴の持ち主です。未開のネイティブ・アメリカンの部族を尋ねて実際に毛皮の取引をしたことがある、と解説にあり、細部までリアリティのある表現はなるほどな、と思わせるものがあります。

 

少年ディックが旅立つ前に、銀の銃を手に入れるところと、狭いテントの中で背中合わせに三脚のような陣形を作って三人が休息を取るところ、野生の馬を乗りこなすところにかなりわくわくしました。

 

しかし、いくら自分が衰弱しているからといって、愛犬クルーソーが捕ってきた雷鳥の胸を裂いて血を飲むことができるだろうか、と想像するだけでめまいがしそうです。

 

物凄い空腹かつのどが渇いている時に、ディックが急に塩水を摂取して危険な状態になるシーンに恐ろしさを感じました。灰色熊に遭遇する場面も怖かったです。

 

この話で好きなのは、クルーソーに自分の子どもを助けられた母親が、そのことをきっかけにディックたちを信じてくれるようになる場面です。

 

 

「この女は、じぶんの子どもの命を救ってもらった、命の恩人と話しているのだ。インディアンの女としてではなく、ひとりの母親として。」

 

ジョーの心は、さらに強くなった。

 

(中略)

「みんなに、なんと思われてもいいのか」

 

「かまいません」

 

 

ネイティブ・アメリカンの方と打ち解けるのは、作者自身の体験に基づくものなのかな、と思いました。

 

結構心躍るお話だったのですが、検索したところ、アマゾンには全集の書影しか出てきませんでした。

このお話だけで書籍化はされていないのかもしれません。ちょっと残念です。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。