ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

ジョン・クリストファー『トリポッド③潜入』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ジョン・クリストファー、中原尚哉(訳)『トリポッド③潜入』を読みました。

 

トリポッドへの抵抗勢力「白い山脈」に参加したウィルたちは、トリポッド自体が意思を持つ存在なのか、それとも別の生命体が操縦している機械にすぎないのかを確認するため、奴隷としてトリポッドの都市に送り込まれるキャップ人たちと共に、奴隷になりすまして都市に潜入します。

 

苦しい出来事が多い3巻なのですが、なんだかんだでこの巻が一番好きかも知れません。

 

 

ぼくは負けたのだ、やっぱり。それでもベストをつくしたじゃないか。ビーンポールのように。

 

 ふいに、脳裏の靄のなかから、ビーンポールのこわばった苦々しげな顔が浮かんできた。

 

 ―― 自分ではがんばっているつもりだった。でも、ほんとうにそうだったのかな。

 

 ぼくはどうなんだろう。

 打たれたのはガードが甘くなったせいだ。でも、無意識のうちに自分からガードを甘くしていたということはないだろうか。

 いまでもこう考えているじゃないか…ベストをつくして負けたんだから、だれからも責められはしない。トリポッドの都市へは行かずに、白い山脈に帰ればいいんだって。

 

 自分への疑問。それは見過ごすわけにはいかなかった。

「…八(アハト)!」

いつのまにか立ちあがっていた。

 

 

主人公・ウィルが未知の存在への恐怖と闘う間に、いつの間にかそれが自分との闘いになっている、という展開が好きなのだなと思いました。

 

 

顔を流れる塩辛い汗に、さらに塩辛い涙がまじった。悲しみの涙だけでなく、もっと強い怒りによる涙だ。これほどの怒りを感じたことはない。

 

 ワートンの教会の主任司祭は、書斎と称している部屋を持っていた。そこには光沢のある化粧材の張られた、薄い引き出しが何段もある戸棚があった。ある日ぼくが、用事があって司祭を呼びに行ったとき、その引き出しのひとつを見せてもらった。ガラスの下におさめられているのは、色鮮やかな羽を展翅された、たくさんの蝶の標本だった。

 

 このフロアに展示されているものを見たとき、ぼくはそれを思い出した。

 

 ならべられているのは、無数の棺だ。

 

 

ウィルが行くべきか悩んで、苦しんで、苦労して敵の陣地に潜入した姿を見届けていると、この気味悪さはよく分かると思います。

次巻は最終巻です。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)