ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

マーク・ストランド『犬の人生』

おはようございます、ゆまコロです。

 

マーク・ストランド、村上春樹(訳)『犬の人生』を読みました。

 

ピューリッツァー賞詩部門を受賞された作者の短編集です。

 

好きな話はいくつかあるのですが、特に好きなのは、たくさんの美しい出会いの話「真実の愛」です。

 

 

 小柄なオーストラリア人の妻が、私のこれまでの結婚歴を知ったのは、結婚後何カ月かたってからだった。不快な真実より、心地良い沈黙を選んだことは、言うなれば私の思慮深さの証であった。

 

 

そういう上記の彼はこの時点で3回離婚しているので、真実を不快にしているのはどなたなのかとつい思ってしまったりもするのですが。

 

風景描写がきれいだと思ったのは、「ベイビー夫妻」という話です。

 

 

そしてパーティー会場に向けて歩いていくとき、二人は木の葉の魔術的なまでの親密さに、ほとんど圧倒されんばかりだった。木の葉は緑の香ばしさで、夏の甘い香料で、大気を満たしていた。二人の頭上の、身動きしない楓の枝の天蓋の上では、月がじっとその目を見開いていた。

 

 

開放的で素敵な夏の様子が伝わってきます。

逆に、えっ?!と思う話も多いです。

旅先で知り合った女性の部屋に入ったら、その恋人が二人を見ていたという「ザダール」という話と、存在しない者の名をしつこく呼んだために浮気を疑われた男が、こっそり後をつけてきた最愛の妻を槍で殺してしまう話(「ケパロス」)にはびっくりしました。

 

荒唐無稽では無いのですが、多様性に富んだ境遇と結末が面白いです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

犬の人生 (中公文庫)

犬の人生 (中公文庫)