ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

橘玲『言ってはいけない 残酷すぎる真実』

おはようございます、ゆまコロです。

 

橘玲言ってはいけない 残酷すぎる真実』を読みました。

 

本書で取り上げられている「言ってはいけない」真実として、大きく分けて

 

1.努力は遺伝に勝てないこと、

2.見た目で人生が決まること、

3.子育て・教育は成長に関係がないこと、 の3つが紹介されています。

 

各章ごとに、その根拠となる事例やデータがあるのですが、特に印象に残ったのは、1.の遺伝に関する章です。

 

 

インターネットの質問サイトに、「精神病は遺伝するのでしょうか」との質問が寄せられることがある。そこでは匿名の回答者が「精神病と遺伝の関係は証明されていない」とか、「精神病の原因は遺伝よりストレス(あるいは人格形成期の体験)にある」などとこたえている。医師(小児科医)が自身のホームページで、「精神病は遺伝ではありませんから安心して子どもを産んでください」と書いているものもあった。

 

 夫(もしくは妻)が精神疾患を患っていて、子どもをつくろうかどうか悩んでいる夫婦がワラにもすがる思いでインターネットを検索すると、ほぼ確実に、専門家らしき人物が「精神病は遺伝しない」と断言している文章を見つけることになる。それを読んだ2人は、妊娠をこころから喜ぶことができるかもしれない。

 

 これはたしかにいい話だ。しかし匿名の回答者や善意の医師は、その後の2人の人生に起こる出来事になんの責任も取ろうとはしないだろう。

 

 これも結論だけを先に述べるが、さまざまな研究を総合して推計された統合失調症の遺伝率は双極性障害(躁(そう)うつ病)と並んできわめて高く、80%を超えている(統合失調症が82%、双極性障害が83%)。遺伝率80%というのは「8割の子どもが病気にかかる」ということではないが、身長の遺伝率が66%、体重の遺伝率が74%であることを考えれば、どのような数字かある程度イメージできるだろう。背の高い親から長身の子どもが生まれるよりずっと高い確率で、親が統合失調症なら子どもも同じ病気を発症するのだ。

 

 私たちはこの「科学的知見」をどのように受け止めればいいのだろう。私のいいたいことはきわめてシンプルだ。

 

 精神病のリスクを持つ夫婦がこの事実を知ったとき、彼らは出産をあきらめるかもしれないし、それでも子どもがほしいと思うかもしれない。2人(と子ども)の人生は自分たちでつくりあげるものだから、どちらの選択が正しいということはできない。だがその決断は、願望ではなく正しい知識に基づいてなされるべきだ。

 

 あるいは、精神病と遺伝との関係が社会に周知されていれば、父母やきょうだい、友人たちはそのリスクを知ったうえで、2人を援助したり、助言したりできるかもしれない。そのほうが、インターネットの匿名掲示板を頼りに、人生のたいせつな決断をするよりずっとマシではないだろうか。」(p24)

 

 

「現代の進化論が突きつける不愉快な真実は、歪んだ理性を暴走させないための安全装置なのだ。」と、筆者はあとがきにて結んでいます。

大事なのは知りたくなかった真実に悲観することではなく、そこからどうすべきか、を考えることであると、素直な気持ちで思えます。

 

タイトルから予想して、がっくり来る内容かと身構えましたが、意外と受け入れられました。面白かったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)