おはようございます、ゆまコロです。
ベルンハルト・シュリンク、松永美穂(訳)『逃げてゆく愛』を読みました。
『朗読者』を書いた作者の短編集です。
最後にちょっとした驚きや、余韻を残して終わるところが、『朗読者』の時と似ていて、好きな感じです。
彼らが強制収容所の跡地を見に行くと言った時、目上の人に言われた言葉が印象的です。
「もちろんおぞましいことだったさ。でもだからといって、オラーニエンブルクやダッハウやブーヘンヴァルトでおぞましい現在を過ごす必要があるのかね?戦争のずっと後に生まれて、誰にも暴力を加えたりしていない人たちまで?特別な過去というのは場所と結びついていて、その場所にも罪の一部があるからかい?」
2人の背後にある宗教問題とは真逆とも見えるような、親密な描写も際立っています。
疲れているときには、愛し合ったあと眠り込こんでしまうときのことを想像する。自分の腹を彼女のお尻にくっつけて、手は彼女の両胸のあいだに置いて、愛の匂いに包まれながら。しかしこうした空想や憧れも、彼はニューヨークに置いてきてしまっていた。それは単に、そうした夢想が引き起こす勃起が痛みをもたらすせいだったのかもしれないけど。
途端に現実に戻ってきてしまった感がありますね。この短編のタイトルは「割礼」なので、仕方ないのかもしれません。
あれか、これかの選択しかないのだろうか?男か女、子供か大人のどちらかしかないのだろうか?ドイツ人かアメリカ人、クリスチャンかユダヤ人?話してもなんの役にも立たないのだろうか?話すことは、相手を理解する助けにはなるけれど、だからといって相手を受け入れられるわけではない。そして、肝心なことは、理解ではなく、受け入れることなのだから?しかし、受け入れることに関しては ―― 人は結局、自分と同じような人間しか受け入れられないのだろうか?
苦しい問いです。
これは、作者自身も問うたことがあるのかな、と思いました。
他の本も読んでみたいです。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
- 作者: ベルンハルトシュリンク,Bernhard Schlink,松永美穂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/09/27
- メディア: 単行本
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