ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

石川直樹展に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

新宿で開催中の、石川直樹さんの写真展に行ってきました。

 

以前、山好きの父(登ったりはしない)と一緒に水戸で写真を見たことがあり、印象的だったので今回も行ってみました。

 

石川直樹さんはエベレストに二度登っている写真家さんです。

 

開館10分前(この展示は11時からオープンです。)に到着すると、待っているのは4人ほどでした。

これは見やすそう、と入りましたが、昼頃出てきたら結構人が増えていました。

 

とくに登山をしない私には、見たことのない写真ばかりで興奮します。

珍しい写真もさることながら、この展示で好きなのは、石川さんが実際に使っているテントなどの登山の道具の実物が紹介されているところです。

道具に石川さんの手書きのコメントが付いているのも楽しい。

 

雪山用の膝までのブーツに、小柄な人なら入れそうな、大きなリュック、日焼け止めなどの装備も、眺めているだけでワクワクします。

 

しかしミュージアムショップにあった彼の著書の中に、

「山で食べる桃の缶詰が昇天しそうな美味しさ」みたいな記述があり、その旅の過酷さが伺えます。

 

彼が影響を受けた本たちが展示されているのも面白く、ついじっくり眺めてしまいます。

 

草原にいるペンギンの群れの写真がとても可愛くて、クリアファイルを買ってしまいました。

 

山が好きな人、写真が好きな人、ミニマムな暮らしが好きな人ならきっと楽しめると思います。

 

石川直樹

この星の光の地図を写す」

東京オペラシティ アートギャラリー(初台)にて

開催中〜2019.3.24まで。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。f:id:hamletclone:20190201194241j:imagef:id:hamletclone:20190201194340j:image

丹羽宇一郎『死ぬほど読書』

おはようございます、ゆまコロです。

 

丹羽宇一郎『死ぬほど読書』を読みました。

 

読書のスタイルについて書かれた本が気になるときがあります。

作者の丹羽さんは、伊藤忠商事の社長さんだった方です。

 

共感できるな、と思ったのは、「欲望をどこまでコントロールできるか」という箇所です。

 

「栄養を摂らなければ生きていけないように、心にもまた栄養が必要です。その栄養となるのが読書です。

 心に栄養が足りないと、人のなかにある「動物の血」が騒ぎ出します。ねたみ、やっかみ、憎しみ、怒り、利己心、自暴自棄、暴力的な衝動など、まるでジャングルの獣のごとく次々と表出する動物の血は、負の感情を生み出します。

 新聞の三面記事や週刊誌の記事は、たいていこの動物の血が引き起こした事件やスキャンダルで埋められています。

 (中略)極限状態に追い詰められた人間は、動物の血が強くなります。ジャングルで死線をさ迷った兵士が仲間の死体を食べたという話は事実です。倫理的な問題をはらみますが、戦争はまさに「動物の血」を激しく煽るものです。

 戦争が引き起こした数え切れないほどの悲劇を見れば、人の心がいかに弱いものであるか、そしてその鍛錬がいかに難しいものであるかがわかります。だからこそ、そのことを十分に自覚しながら、心を磨かなくてはいけないと思います。」

 

 丹羽さんは「読んだ本をノートに書き写している」と知り、興味を持って手に取りました。

 本好きな知り合いはいても、読書ノートを付けている人にはまだ会ったことがなく、どんな感じなのか気になったからです。

 

 でもノートの写真は載っていたけれど、遠目すぎてよく分かりませんでした…。

 

今度、子供の頃の丹羽さんがよく泣いたという「次郎物語」(下村湖人)を読んでみようと思います。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

 

 

ポール・オースター『幽霊たち』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ポール・オースター柴田元幸(訳)『幽霊たち』を読みました。

 

現実味のある夢を見ているような感じがするのだけど、時々、感激するほど優しいのが、オースターの文章の好きなところです。

 

ブルーがブラックの部屋から持ち帰った紙束が、自分の書いた報告書だった、と知る場面が怖いです。

 

ちょっと藤子・F・不二雄先生の短編みたいな感じがします。

 

「かりに少年がゴールドの息子だったというなら、話はわかる。復讐、ということに尽きるわけであり、それなら誰にも合点がいく。だが少年はゴールドにとって赤の他人だったのだ。そこに個人的な要素はいっさい入っていないし、隠れた動機なども何ひとつなさそうだ。この点がブルーの胸を強く打つ。つまりゴールドは、子供を殺した犯人が罰せられずに済んでしまうような世界を認めたくないのだ。たとえ犯人自身はすでに死んでいるとしても同じことである。その不正をただすためなら、ゴールドは自分の人生、自分の幸福を犠牲にしてもいいと思っているのだ。」

 

登場人物の名前が色の名前なのも、無機質な感じがしてなんだか不安な気分になりました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

 

 

森村誠一『新版 悪魔の飽食 日本細菌戦部隊の恐怖の実像』

おはようございます、ゆまコロです。

 

森村誠一『新版 悪魔の飽食 日本細菌戦部隊の恐怖の実像』を読みました。

 

印象的だったのは、次の2ヶ所です。

 

「「今にして思えば、あのロシア人のいっていたことは、自由を奪われた人間の心からの叫びだった……しかし当時の私には彼の怒りが理解できなかった。マルタ(※捕虜のこと)はそもそも人間ではなかったし、いわんやマルタごときになめられてたまるか、暴動を起こされてたまるかという気持ちだった……だが死の訪れる最後まで銃口の前で胸を張り、足を踏み鳴らして抗議していたその態度は、一種強烈な印象をわれわれに与えたものだ……われわれは弾丸で彼の口を封じたが、自由を束縛された素手の彼にまぎれもなく圧倒されていた。あのとき、正義がわれわれにはないことを、皆が暗黙裡に悟っていた。あのときの光景を思い出すと、今でも夜眠れなくなる」」

 

「この美しい惑星に生まれ合わせた私たちは、なぜ戦争をして殺し合わねばならないのか。戦争のルールが守られようと守られまいと、戦争は人類の英知を否定するものである。

 

 戦争は畢竟、偏狭で独善的な民族主義から発する。自分の国と民族さえ居心地よく暮らせれば他の国などどうなってもいいという発想である。」

 

読み始めて20ページ目くらいで、早くも読もうと思ったことを後悔していました。

日本人として、いたたまれない気持ちになりますが、加害の記録が残っているというのは大事なことだと思いました。

飽食のタイトル通り、実際に第七三一部隊が戦時下で豊かな食生活と快適な住環境の恩恵を受けていたことが興味深かったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

新版 悪魔の飽食―日本細菌戦部隊の恐怖の実像! (角川文庫)
 

 

ポール・オースター『鍵のかかった部屋』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ポール・オースター柴田元幸(訳)『鍵のかかった部屋』を読みました。

 

この本は、内省的な表現の多いオースター作品にしては、かなり物語に動きがある話だと思いました。

主人公は親友の奥さんや、親友の母親と関係を持ったりと、奔放な印象で、ちょっと珍しい感じがします。

 

「彼女は泣き出した。そしてそれから一週間泣きつづけ、あたかもファンショーが死んでしまったかのように、彼を失ったことを悼んだ。しかし涙がやんだとき、彼女の心に悲嘆の念はなかった。ファンショーは何年かのあいだ私に与えられたのだ、それが終わりになっただけのことなんだ、そう彼女は割り切ることにした。」

 

この「彼女」の気持ちの折り合いの付け方が、ちょっといいと思いました。

 

「自発的な善行、自分がしたことに対する揺るがぬ信念、それが招いた結果をほとんど受動的に黙って受容する姿勢。彼の行ないがどんなに素晴らしいものであっても、彼自身はいつもどこか、その行ないから超越しているような気がしたものだ。おそらく彼のこういうところに、ほかのどの点にもまして僕は気おくれを感じ、ときとして彼から距離を感じることになったのだろう。僕がファンショーのすぐそばまで近づいてゆき、心の底から彼の素晴らしさを讃え、彼にふさわしい人間でありたいと絶望的なまでに強い欲求を覚える―そして突然、ファンショーは僕にとって他人なのだと思い知らされる瞬間がやって来るのだ。」

 

こういう劣等感の感じ方も、分かるような気がしました。

 

孤独で破壊的な後半よりも、幼少時代の“僕”とファンショーと、それらを取り巻く世界について書かれる前半が好きです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 

 

岩田正美『現代の貧困ーワーキングプア/ホームレス/生活保護』

おはようございます、ゆまコロです。

 

岩田正美『現代の貧困ーワーキングプア/ホームレス/生活保護』を読みました。

 

岩田正美先生は、社会福祉学者さんです。

少し前の本ですが、そうかも、と思うところがいくつかありました。

 

◆結婚しないということ

「たとえば20代男性は年収500万円を超えると、30代男性は年収300万円を超えると、既婚率が50%を超える。つまり近年の晩婚化・非婚化は、結婚したくない男性増えたために生じたというよりは、フリーターや無業者が増える中で、結婚したくてもできない人が増えたために生じたといえるのではないだろうか。」

 

◆積極的な反貧困政策を

「“改革”の基本方針は一律負担増・給付減にあるが、いちはやくそれが断行されたのは、文句を言いそうにない「不利な人々」が影響を受ける制度においてである。

 

 このような逆方向を向いた社会保障改革を断行するのは、経済さえ活性化すれば貧困も格差もどこかへいってしまうという楽観的すぎる思いこみがあるからだろう。だがもちろんそうなる保証はどこにもない。

 

 競争力の強化がいつも叫ばれているような社会では、経済は改善しても「特定の人々」の生活は少しも改善されない可能性が高い。そこで、こうした楽観論を排して、今日の社会経済状況の変化に対応した社会保障制度や労働政策への「抜本的」転換を求める声も少なくない。」

 

やや具体性に欠けるというか、では自分には何ができるだろう、という気持ちなりましたが、いわんとするところは何となく分かりました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)

 

 

谷川俊太郎 with friends『生きる―わたしたちの思い』

おはようございます、ゆまコロです。

 

谷川俊太郎 with friends『生きる―わたしたちの思い』を読みました。

 

谷川俊太郎さんの有名な詩「生きる」を初めて読んだのは小学生の時でした。

その時は、何となくいいな、という感想は抱いたものの、それほど印象には残りませんでした。

 

でも、大人になってふたたびこの詩を読んだとき、すごい衝撃でした。それから、谷川俊太郎さんが好きになりました。

 

この本では、いろんな人が自分にとっての“ 生きる ”こととはなにか?を、谷川さんの「生きる」の詩にならって寄せています。

 

「(ジブリール)この前、映画の『ヤーチャイカ』(※谷川俊太郎さんが監督を務めた映画)を見てきたんです。その中で衝撃的だったのが、「僕は言葉を信じていない」と谷川さんがおっしゃってたことで。私自身の「生きる」ということに対するテーマは「自分を信じる」とか「人を信じる」とか、信頼ということなんです。確かに言葉を信じて傷ついたり、でも言葉を信じて何かを伝えようとしている自分がいる。言葉が信じられない谷川さんが信じるものって何ですか。

 

(谷川)言葉を超えた存在はすべて信頼していますね。極端に言えば、言葉で表現できない存在というのはすべて信頼できます。人間もそうでしょう。ひとりの人間を言葉で表現しつくすことは不可能だから、ひとりの人間というのはつねに言葉を超えた存在で、その言葉を超えてるところを信じています。」

 

言葉を信じていない谷川俊太郎さんの、紡ぐ言葉の影響力…。次元の違いを感じます。

私も、うまく気持ちを表現する力を磨きたいと思いました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

生きるわたしたちの思い

生きるわたしたちの思い