ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

すぐに動きたくなる。『世界大異変―現実を直視し、どう行動するか』を読んで

おはようございます、ゆまコロです。

 

ジム・ロジャーズさん、花輪陽子さん/アレックス・南レッドヘッドさん(監修翻訳)の『世界大異変 現実を直視し、どう行動するか』を読みました。

 

ジム・ロジャーズさんは、世界三大投資家の一人として注目される投資家です。インタビュー形式のページが多く、分かりやすそうだなと思って手に取りました。

 

 ウクライナ侵攻で、世界はどう変わるのか

(中略)といって何も変わらず、 憎悪や暴力は続いている。これを解決するには、残念だが時間が経つのを待つ以外にすべがない気がしている。
 同時に時間は壊滅的な影響を及ぼす可能性もあり、時間がもっと悪い方向に事を動かし、結果、実際の戦争を引き起こすこともある。バイデン大統領のこれまでの対応で米中関係が改善される動きはまったく見られず、口先だけの社交辞令的な外交を続けているにすぎない。
 中国はウクライナ侵攻に対する対応でもコメントを抑制しているが、アメリカが中国を最大の競争相手と定め、封じ込め策を打ち出してくることは認識しているはずだ。両国の対立がこれ以上エスカレートしないことを祈っている。


――日本は米中対立の争いに引きずりこまれているように思いますが、ジムさんは日本の対中戦略について、どう思われますか。

 

ロジャーズ   日本と中国に限らないが、他国との争いは行うべきではない。中国は1978年に鄧小平が国交を開き始め、その後の30~40年、とりわけ1990年代に「改革・開放」政策を推し進めたことで経済が大きく成長した。 中国の成長は、中国に投資したアメリカや日本の経済も成長させた。言うなれば、 「Win-Win」 の関係だった。
 中国が急激に成長し、アメリカ主導の国際体制と争う意思を鮮明にしたことで、 米中間で貿易戦争が始まってしまったが、私が日本のリーダーだったら、戦いを選ぶのではなく、どうすれば中国の成長に貢献し、ともに成長できるかを考えるだろう。ともに成功する道を見つけることが日本のためになる。
 私は日本の政治家ではないが、彼らには中国と協力してお互い成功する道を探してほしい。例えば日本の農家の多くは衰え始めている。世界一の人口を抱える中国から農民を連れてきてはどうだろうか。
 しかし、私は日本がそんな選択をするはずがないことを知っている。どんなに衰退し、たとえ飢え死にしようとも日本は移民を受け入れることはしないだろう。 いくら移民を受け入れることのメリットを訴えても、多くの日本人が「外国人を受け入れるよりは、日本人だけで滅びてしまったほうがマシだ」と言うから驚きだ。

(p65)

 

農業の担い手不足を補うために、他国から来てもらうのはどうだろう、と私も思いますが、同時に、そんな選択はうまくいかないだろうな、という想像もできます。「移民は受け入れないだろう」と、ちゃんと分かっていらっしゃるのがすごい。

「私が日本のリーダーだったら、戦いを選ぶのではなく、どうすれば中国の成長に貢献し、ともに成長できるかを考えるだろう。ともに成功する道を見つけることが日本のためになる」この意見には大きくうなずけます。

 

ロジャーズさんは、自分が日本のリーダーだったらこんな政策を行うと言っています。

 

 どうすれば、女性が子供を産みたいようになるかを考える。そして、このことに大きな予算を使うべきだと主張する。
 そして、同時に、日本の財政の立て直しに取り組むだろう。日本の予算における歳出は、歳入をはるかに上回る状態が続いている。赤字国債の発行が常態化しており、財政赤字は毎年増え続けている。何度も言っているが、こんなことがいつまでも続けられるはずがない。
 財政は破綻しなくても経済は破綻する。財政を健全化させなければ、国債金利は跳ね上がり、日本の円は暴落してしまう。その日はすぐそこまで来ている。そうなれば、国民はこれまでのような豊かな暮らしを続けることは難しい。だから、無駄な歳出を思い切ってカットする。
 次に、移民政策に取り組む。 シンガポールのように、スキルの高い外国人に移住してもらうにはどうすればよいかを考える。 優秀な外国人の人材を日本に呼び込むことで、高齢化がもたらすショックを緩和させることもできる。
 また、素晴らしいアイデアを持った外国人が日本に来てくれることで「変化」を起こし、イノベーションが起こりやすい社会に変えることができるかもしれないと思っている。とにかく急ぐことだ。日本には時間がない。 衰退してしまってからでは遅いのだ。
 少し話がそれるが、今後、アメリカが衰退の道をたどり始めると、ニューヨークなどのアメリカの主要都市は今ほど魅力的でエキサイティングな場所にはならなくなる。 フランスのパリが良い例だ。 今から100~120年前のパリは、世界でもっともエキサイティングな都市で、第一次世界大戦前には全世界の思想家や文化人は皆がパリに集まった。 ピカソモディリアーニも日本の藤田嗣治も、みなパリにあこがれ、パリで才能の花を咲かせたのだ。
 同じように、ニューヨークという都市は今後も存続するが、アメリカという国が衰退していけば、その存在感は薄れていくだろう。東京も日本が衰退していけば、これからは徐々に魅力を失っていくに違いない。それは私にとっては非常に残念なことだ。東京は私が大好きな都市の一つだからだ。
 しかし、間違いなく言えることは、50年後、日本の総人口は7500万人にまで減少し、債務が急激に増え続け、労働人口も激減することだ。これは単純な算数の話で、おそらく予測は現実となる。そのとき、世界でもっとも輝いているのは北京か上海か。 それとも中東やアフリカに台頭著しい都市が現れるのかもしれない。

(p92)

 

「財政を健全化させなければ、国債金利は跳ね上がり、日本の円は暴落してしまう。その日はすぐそこまで来ている。そうなれば、国民はこれまでのような豊かな暮らしを続けることは難しい。だから、無駄な歳出を思い切ってカットする。」

無駄な歳出を思い切ってカットする。これは本当にやっていただきたいなあと思います。ロジャーズさんだったら、何をカットすべきと見るのか、聞いてみたいものです。

藩主の江戸生活費も何十人も抱えてた奥女中も、ガンガンにカットする上杉鷹山みたいなリーダーがほしい。

 

 円安インフレ時代、日本人のための資産防衛術
 円建ての年金は、将来大幅に目減りする危険がある


――円安が進み、エネルギー価格が上がっています。


ロジャーズ   円安になれば、当然、海外からの輸入品の値段が上がる。また、低金利のままインフレになると国の借金は目減りするが、庶民の暮らしは苦しくなる。
 インフレというのは、知らぬ間に庶民の財布が国の財布に付け替えられることを理解すべきだ。90年代の後半、日本の財政赤字が問題視されるようになった頃、ある日本の大物政治家が「政府の借金など返済できるはずがない。 インフレで目減りさせるしかない」と言っていたが、彼の描いていた通りになることを危惧している。
 たしかに、歴史上、財政赤字で窮地に陥った国はたくさんあるが、いずれもきちんと返済できた例はない。 ブルボン朝時代のフランス、大戦間期のドイツ、戦後の日本、最近では財政破綻した旧ソ連がそうである。 みな猛烈なインフレに襲われ、国民の資産価値は大きく失われることとなった。
 日本の大半の人は、インフレの怖さを気にしていないようだが、気にし始める頃にはもう手遅れになっているかもしれない。「プランB」の準備が必須で、資産の一部を円とは別の通貨に分散することを強く勧める。海外に移せば資産防衛だけでなく、国内ではお目にかかれないような様々な投資商品に巡りあうことができるし、それは大きなチャンスでもある。
 残念ながら、 これから日本は確実に貧しくなっていく。財政赤字が膨らんでいく一方で、日銀が金融緩和でお金を刷り続けている以上、将来、円の価値は確実に下がるからだ。


――我々ができる防衛策はありますか。

 

 円が現在の価値を保っているうちに、早急に海外に資産を移すことを勧めたい。現在、多くの資産を持っている高齢者たちは、基本的には円高の時代を生きてきた人たちだ。円で資産を持っていれば、その価値は相対的に上がっていった。 現金で貯金を増やしていくという行動は、大きく間違ってはいなかった。
 しかし、これからは円の価値が下がることを考えて行動しなければならない。日本人のほとんどが老後の生活は、日本円で保有する資産と年金をあてにしている人が多いだろうが、そういう人ほど痛手が大きくなる。額面通りの金額を受給できたとしても、円安とインフレで実質的な価値は大きく目減りしてしまうからだ。財政破綻した旧ソ連の年金が、猛烈なインフレでその価値をほとんど失ったことを知るべきだろう。
 80年代、90年代には、普通の国民が海外に投資するのは、ややハードルが高かったかもしれない。しかし、今では普通に海外口座がつくれるし、面倒くさいことが嫌いな人は、海外の株や債券のETF投資などを行えばよい。

(p103)

 

インフレを気にする頃にはもう手遅れかも。誇張ではなく、そう思わせるような物価上昇率の世の中になってきました。インフレから資産を守るためにも運用は必須ですね。

そして円以外の資産をしっかり形成しようと強く思いました。

 

 金や銀への投資は今からでも遅くはない

 

――金への投資はもう上がりきったので終わりだと言う人も多くいますが、金や銀の将来についてはどう思われますか。

 

ロジャーズ   終わったと言われ、みなが売っているならば、それはとても良いニュースだ。みながそう思って諦めたときこそ買い場だと思う。タイミングをドンピシャで当てることはできないが、修正局面でさらに買い増したいと思っている。
 金や銀はまだまだ上昇余地があると見ている。なぜなら、世界中で印刷されている紙幣のツケはいずれ回ってきて、通貨に対する信頼性が大きく損なわれると考えるからだ。 仮に相場が下落しても、金や銀の価値がゼロになることはありえない。

    さらには、これから生じる様々な産業界の変化によって、銀や銅といった鉱物資源の需要は高まる。 成長が見込まれる電気自動車やソーラー発電に銀は不可欠だ。 これはほんの一例であって、これから生じる様々な変化によって、銅、リチウムなどの需要も高まるだろう。
 私が言うことを信じる人は実物資産を保有したがる。 現在、金は米ドルを含めたすべての通貨で見ても最高水準にある。 金や銀が今後どこまで上昇するかわからないが、銀の過去最高値は1トロイオンス(=約3・103グラム) 50ドルであり、確実にその水準までは戻ると見ている。私は、金と銀であれば、今は銀を選んでいる。 両方とも保有しているが、金に比べ、銀は相対的に割安だと思っているからだ。
 もし今あなたのポートフォリオに、金、銀がなければ、今からでも買うとよい。 商品の中でも特にこれらの貴金属はポートフォリオの保険になるからだ。 誰もが医療保険終身保険を持っているように、ポートフォリオとして金や銀を持つべきだ。 医療保険終身保険は、できれば一生使いたくないものだが、それを持っていると安心できるものだ。金や銀もポートフォリオの中で、そのような位置づけになるべきと思う。
 もちろん、タイミングが合えば大きな利益を生みだしてくれる。 また、親として、 子どもたちに保有している金、銀を資産として引き継がせることもできる。何度も言うが、歴史を振り返ると、人々が政府に対して信頼を失くしたとき、金や銀の価格は高騰している。
 これからどのような大異変が起こっても、金や銀を持っていることは安心を生む保険となるに違いない。

(p121)

 

銀もコロナ禍以降、投資目的としての需要が増えたというのは、聞いたことがあります。

「終わったと言われ、(中略)みながそう思って諦めたときこそ買い場だと思う。」さすがに考え方が違います。北朝鮮に当たり前なんだけど、みなと違うことが出来るのがすごいなあと感心してしまいます。

 

 18世紀の偉大な哲学者ヴォルテールは、「一番幸福な人生は自分の人生だ」 という意味の言葉を遺しているが、私も彼の言葉に共感する。 人生の意味とは、自分が望む人生を生きることだと思っている。しかし、戦争は、自分の人生を生きることを容赦なく奪っていく。だから、戦争は絶対に起こしてはならない。本書の最後に、このメッセージをみなさんに届けたい。
 現在、世界は、急激なインフレや巨大なバブルの終焉に直面している。本書のタイトルにあるように「大異変」が目前に迫っている。そのようなときにこそ、みなさんは危機を生き抜くための正しい知識を身につけなければならない。正しい知識は危機からあなた自身を助けてくれ、危機後の人生を豊かにしてくれる。 これが本当のラストメッセージだ。
 本書が、日本のみなさんのお金や投資に対する理解を助けるとともに、来るべき危機から身を守り、次なるチャンスをつかむきっかけとなることを願っている。

(p135)

 

歴史と哲学を学ぶことが、成功への道なんだということが、ロジャーズさんの言葉から伝わってきました。

このヴォルテールの言葉と同じものを探すことができなかったのですが、ニュアンスが近いのはこんなのでしょうか。

「私がいるところ、それが地上の楽園だ。」

 

そもそも現実に迫る危機とはなんなのか、それを知るには良い本だと思います。

資産運用をどのように行っていったらよいのか、その方法が分からないと漠然とした不安を感じながらも立ちすくむことしかできませんが、少なくともアクションを起こさなくちゃ、という気持ちになってきます。

これからやってくる危機に備えるため、動き出したくなりました。

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。