おはようございます、ゆまコロです。
いろんな視点から語られる話なのですが、輪郭がぼんやりとしていて、誰かの夢を見ているような不思議な感覚に陥ります。
印象的な科白はこちら。
「そういう気持ちになれんかったら、無理してやることなんかないんやから。正直な話、私はこれまでにけっこうたくさんの男とセックスしてきたけど、考えてみたらね、それは結局のところ、恐かったからやねん。誰かに抱かれてないと恐かったし、求められたときにはっきりいやと言えなかったから。それだけ。そんな風にセックスしてもね、なんにもええことなんかなかった。生きてく意味みたいなもんが、ちびちびすり減っていっただけやった。」
そして村上作品に出てくる男性にしては、いまいち気持ちに寄り添いにくい、と感じながら読んでいた大学生・高橋。
彼が、本当はちょっといい人かもしれない、と思えたのは、怖がるマリを勇気づけるこの場面です。
「ほんとうは行きたくなんかないの」とマリは言う。
「中国に?」
「そう」
「どうして行きたくないの?」
「怖いから」
「怖くて当たり前だよ。一人でよく知らない、遠いところに行くんだもの」と高橋は言う。
「うん」
「でも君なら大丈夫だよ。うまくやれる。僕もここで帰りを待ってるし」
どんな話か?と言われると、ざっくりしていて捉えにくいのですが、出てくる人たちの生活態度や主張には、各々強い個性があり、そこがかえってリアルに感じました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。