ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

村上春樹『アフターダーク』

おはようございます、ゆまコロです。

 

村上春樹アフターダーク』を読みました。

 

いろんな視点から語られる話なのですが、輪郭がぼんやりとしていて、誰かの夢を見ているような不思議な感覚に陥ります。

 

印象的な科白はこちら。

 

 

「そういう気持ちになれんかったら、無理してやることなんかないんやから。正直な話、私はこれまでにけっこうたくさんの男とセックスしてきたけど、考えてみたらね、それは結局のところ、恐かったからやねん。誰かに抱かれてないと恐かったし、求められたときにはっきりいやと言えなかったから。それだけ。そんな風にセックスしてもね、なんにもええことなんかなかった。生きてく意味みたいなもんが、ちびちびすり減っていっただけやった。」

 

 

そして村上作品に出てくる男性にしては、いまいち気持ちに寄り添いにくい、と感じながら読んでいた大学生・高橋。

彼が、本当はちょっといい人かもしれない、と思えたのは、怖がるマリを勇気づけるこの場面です。

 

 

「ほんとうは行きたくなんかないの」とマリは言う。

 

「中国に?」

 

「そう」

 

「どうして行きたくないの?」

 

「怖いから」

 

「怖くて当たり前だよ。一人でよく知らない、遠いところに行くんだもの」と高橋は言う。

 

「うん」

 

「でも君なら大丈夫だよ。うまくやれる。僕もここで帰りを待ってるし」

 

 

 

どんな話か?と言われると、ざっくりしていて捉えにくいのですが、出てくる人たちの生活態度や主張には、各々強い個性があり、そこがかえってリアルに感じました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

アフターダーク (講談社文庫)

アフターダーク (講談社文庫)