ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

エドワード・ブルワー=リットン『ポンペイ最後の日』

おはようございます、ゆまコロです。

 

エドワード・ブルワー=リットン、篠原雅之・藤原一生(訳)『ポンペイ最後の日』を読みました。

 

1834年にイギリスで発表されたこのお話の舞台は、西暦79年のローマ帝国ポンペイです。ポンペイはベズビオ火山爆発で、地下に埋没し、18~19世紀に発掘されています。

 

登場人物の役割分担がはっきりしていて(善い悪いが分かりやすい)、なかなかいいと思いました。

ローマの青年貴族グロウカス、彼に思いを寄せる盲目の少女ニジア、支配者になりたがる僧アーベイシーズ、キリスト教の布教に励むオリンサス、財産を奪われたアペサイデスとその妹アイオンなど、人間模様が面白いです。

 

この中で印象深いのは、奴隷として使われていたところをグロウカスに助けられ、以降主人公の役に立とうと立ち回るニジアです。

 

 

「このご恩は一生忘れません。わたしはあなたのお幸せのためならば、あなたのお側をはなれることもいやとは申しませんわ。」

 

 

機転が利いて重宝されたり、途中で「悲しげにグロウカスの顔をみつめながらつぶやいた。」とあったりして、目が見えるようになったのかと思わせるような活躍ぶりです。

結局、グロウカスとは結ばれませんでしたが、個人的にはもうちょっと幸せになってほしかったです。

 

そして、当時のローマ帝国の様子がインパクトありすぎて、街が火山灰に埋もれて消失するほどの大噴火という天災が少しかすむほどです。

罪人をライオンと闘わせる話に気分が悪くなりました。この当時の警察官的な仕事をしている造営官には、サイコロばくちなんかよりこっちを取り締まってほしいと思いながら読みました。

 

まだ全然広まっていないキリスト教のことを、主人公が

 

 

「あの信者の中には、紳士は一人もいやしない。みんな貧乏で、くだらない無知なやつばかりだ」(グロウカス)

 

 

と言っているのも、不思議な感じでした。

 

ポンペイの人たちはキリスト教を人類の敵と考えて、オリンサスにいろんなあだ名をつけていたが、そのうちでもいちばん広く知られたあだ名は “無神論者”  というのだった。

 

そんなオリンサスは、火山が不吉な兆候を見せていると説き、その後地震が起こってからは、信者を集めるようになります。

 

みんなはキリスト教を知る前には、アイシスの女神なる存在を信仰していました。

なんだか馴染みがなくてよく分からないところに、ギリシアローマ神話の神さまの名前がたくさん出てくるので、少し混乱してきます。

 

本当にこんな日常だったのかな、と思いつつも、お芝居のような世界観に入り込むのが楽しい本でした。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

ポンペイ最後の日 (講談社青い鳥文庫)

ポンペイ最後の日 (講談社青い鳥文庫)