おはようございます、ゆまコロです。
レイモン・ラディゲ、新庄嘉章(訳)『肉体の悪魔』を読みました。
かわいいな、と思った場面は、自分より年下の男性に恋をした女の人のセリフです。
「彼女には妻としての義務があることも、夫が出征していることも、自分はよく承知してると、僕は憎悪をこめて言ってやった。
彼女は顔を横に振った。
「あんたを知る前は、わたし、幸福だったわ。婚約者を愛してると思いこんでたんですもの。わたしをよく理解してくれなくても、わたしは許してたわ。わたしがあの人を愛していないことをわたしに教えたのは、実はあんたなのよ。わたしの義務は、あんたが考えているようなものじゃないわ。それは、夫を裏切らないことじゃなくて、あんたを裏切らないことよ。さあ、帰ってちょうだい。後生だから、わたしのことを悪い女と思わないでね。わたしのことなんかすぐに忘れてしまってよ。そうよ、わたし、あんたの一生を不幸にしたくないわ。わたし、泣いてるのよ。だってわたし、あんたにはお婆さんすぎるんですもの!」
この愛の言葉には、子供っぽい中にも崇高なところがあった。今後、僕がどんな情熱を感ずることがあるとしても、十九歳の少女がお婆さんすぎると言って泣くのを見て覚えたこうしたすばらしい感動は、おそらく二度と経験することはないであろう。」
このタイトルから、この本は難解なんじゃないだろうか、と思っていました。
でも思っていたより分かりやすく、面白かったです。
ラディゲは二十歳の時、腸チフスで亡くなってしまいますが、上記のモデルとなった年上の女性に出会っているそうです。
この年代にしか書けない表現なのかもしれません。
最後まで読んで下さってありがとうございました。