ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

乙一『小生物語』

おはようございます、ゆまコロです。

 

乙一さんのファンの友人から借りて、『小生物語』を読みました。

 

乙一さんの著書は以前『GOTH』を読んだことがあります。自分と外界との間に距離があるような不思議な印象でした。この本はエッセイですが、小説と空気が似ているような感じがしました。

 

そう思っていたら、作中に『GOTH』の話が出てきました。

 

「朝にジョギングをしながら、殺人者(の彼女?)の本棚に小生の本があった件について考える。その本はずばり『GOTH』という殺人鬼についての本だった。犯人が殺人を実行するに至る過程で『GOTH』がどの程度の影響をもたらしたのか考える必要があった。はたして、読まなければ人を殺さなかったのか、それとも読まなくても殺していたのか。小生の本の影響など微々たるものだったにちがいないとは思うのだが。それでも殺人に至るメーターの目盛りが1くらいは上昇したのかもしれないなとも考える。まったく無関係とも言えないし、自分のせいとも言えないしで、小生は微妙な位置にいる。…

実は小生、小説の中でほとんど「痛がっている」という描写を盛り込んでいない。その部分を避けてきた。痛みを感じない人を主人公にしたり、痛みを感じさせない殺人者をつくってみたりして、逃げていた。もしかしたらそれは非常にいけないことだったのかもしれないとも考えてみた。」

 

重い告白でした。

でもこの経験が、作者のこれからの作品に影響を与えるのだろうか、とも考えてしまいます。 

作者の言う「痛み」という感情と、人物が密につながっていないところが、私が"距離がある"と感じたところのような気がしました。

 

エッセイも、軽い文体ながら深い場所にいるような読後感でした。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

小生物語 (幻冬舎文庫)

小生物語 (幻冬舎文庫)