こんばんは、ゆまコロです。
この作者は、どうしてこんなに女性の気持ちに沿った文章が書けるのかと不思議に思うことがあります。
「実際にお母さんにならなければわからないことは、たくさんあります。でも、昔はわかっていたはずなのに、お母さんになったとたんわからなくなってしまったこともーそっちのほうがもっとたくさんあります。
なにをしてもうまくいかないとき、どうやって元気を取り戻したのか。
友だちに意地悪なことをされたとき、親や先生には言いつけず、でもやられっぱなしで我慢しつづけるのでもなく、どんなふうにそれを解決したのか。
「お母さんの頃はね」とエリカに教えてあげたいのに、思い出せません。浮かんでくることもなにかぜんぶ嘘っぽく思えて、こんなのいまの子どもたちには通じないよ、という気もして、そんなもどかしさをついエリカにぶつけて、キツくあたってしまうことさえあります。
エリカみたいに要領の悪い子は、教室や友だちの輪の中で、どこに居場所を見つければいいのか。
みんなにちょっとバカにされても嫌われずにいるには、どうすればいいのか。勉強ができない子や、顔がかわいらしくない子や、おしゃべりをしていても面白いことがすぐに思いつかない子は、どんな言葉で励まされて、どんなことで張り切って、どんなことで落ち込んで、どんなことをいつまでもくよくよと気にしてしまうのか。
昔はわかっていたはずなのに。」
(「人生はブラの上を」)
ほろ苦い気持ちになる短編が多く、重松さんにしては、辛い展開が少なめかな、という感じがしました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。