ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

世界報道写真展2019に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

東京都写真美術館(恵比寿)にて開催中の世界報道写真展2019に行ってきました。

 

訪れたのは、6月の日曜日の午前11時頃。結構人がいます。

パネル解説の文字はやや小さいので、前に人がいると若干見えにくくはありますが、同じ文章が写真の左右にあるのと、肝心の写真自体はどの展示も結構大きいので、全然見えない、というほどではなかったです。

 

私はここ5年くらい、世界報道写真展を毎年見に行っています。

内容の凄まじさに、毎年、美術館を出る頃にはヘロヘロになっています。今年も衝撃的な写真ばかりでした。

 

今年、私がショックを受けた写真は、3つあります。

一つ目は、フィリピンの首都マニラの写真です。マットレスの上で横たわっている子どもが写っています。

場所は「パシッグ川」とありますが、写真を見ただけでは川には見えません。どう見てもゴミ捨て場のようです。

ウィキペディアでこの川を調べると、「汚染が進んだパシッグ川」という写真が載っていますが、ごみの量はこんなものではなく、はちゃめちゃに多かったです。

寝ているマットレスのまわりをよく見ると、プラスチックごみだと思われるものが多く、心が痛みます。

 

少しでもプラスチックを減らした生活をしよう、と思いました。

 

ja.wikipedia.org

 

 

もう一つは、イランのサッカー競技場で、男性に扮装してサッカー観戦をしている女性の写真です。(男性ばかりの観客席で、よく見ると、女の人だなと分かります。)

以下は出品リストの解説より。

 

「イランでは、女性サッカーファンのスタジアム入場について制限がある。

2018年3月1日、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がこの問題に対処するため、イランのハッサン・ロウハニと会談。2018年6月20日テヘランのアザディスタジアムについて、特定の女性グループの入場を認める決定が下された。」

 

会談後、国際試合のみ入場可となったものの、選ばれた女性しか入れず、しかものちに撤回されてしまったとのことでした。

 

男女が仕切られた別々のスタンドから観戦する写真もあります。

 

イランの女性サッカーファンも自由に応援できるようになるといいなと思いました。

 

また、2018年11月の米国カリフォルニア州の山火事で、避難させらせている馬の写真もインパクトがありました。背景が真っ赤すぎて、写真なのに逆に現実味が薄いように感じられる不思議な写真です。

 

これが、同じ時代に現実で起こっていることなんだ、と思うと、何かしたくてたまらなくなります。

 

東京・恵比寿の東京都写真美術館にて開催中〜2019年8月4日(日)まで。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。f:id:hamletclone:20190630215041j:image

クリスチャン・ボルタンスキー展に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

国立新美術館(東京・乃木坂)で開催中の、

クリスチャン・ボルタンスキー展に行ってきました。

 

会期が始まって1ヶ月ほど経った後の平日、朝一で行ってきました。

国立新美術館の2階の展示室です。

 

開館の25分前くらいに到着して、まだ待っている人はいませんでした。(開館時間の10時近くになって、後ろに4人ほど並んでいました。)

 

ゆったりした展示で、見て回るには歩きやすくて良かったです。(平日だったからかも知れません。)

 

この展示の中で私が気に入ったのは、「アニミタス(白)」という映像作品です。

カナダ北部の雪原に、風鈴のようなものが無数に立っている様子が映っています。(映像からは、雪が積もっているのは分かりますが、場所は判然としません。出品リストでカナダと知りました。)

見学者の席と、スクリーンの間には、丸めたティッシュのようなものがたくさん置いてあります。

椅子に座って風鈴(?)が風に揺れる映像を見ていると、ここで何を考えていいのかよく分からなくなるような、不思議な気分になってきます。

 

もう一つ、同じ部屋にある「発言する」という作品も、強く印象に残りました。

黒い服を着た人形の前に立つと、それぞれ、

 

<自分自身の死について、そして死後の世界へはどうやってたどり着くのか>

(出品リストより)

 

ということを聞いてきます。喋るセリフは異なっているのですが、人形をめぐって話を聞いていると、だんだん怖くなってきます。

 

ただ、作品には解説板もないので、今見ている作品のタイトルなどが知りたい時は、入口で渡される地図と出品リストを頼りに探す必要があります。(新聞サイズなので、開いて見つけるのがちょっと大変です。)

 

今回の展覧会のクリスチャン・ボルタンスキーさんは、1944年9月21日にパリで生まれた現代アーティストです。

 

彼についてネットで調べている時に、気になるインタヴューを見つけました。

 

 

ーーあなた(=ボルタンスキー)はよく、「(作品を通じて)問いを発することが重要だ」とおっしゃっています。でもそれは簡単なことではありません。あなたはどうして問いを発し続けることができたのですか?

 

 この世界はとても残酷です。私は信仰を持っていませんが、我々の上に何かしらの「力」が存在するのだとすれば、その「力」はなぜ恐ろしいことが起こるのを認めているのでしょうか? 真理を追求するのは、人間の精神の一部だと思います。それぞれの個人が、なぜこんなにも恐ろしいことがたくさんあるのか、なぜ死があるのかを理解したがっている。

 

 私にも答えはありません。むしろ「答えを知っている」という人は危険だと思います。なぜならばそれを他人に強いろうとするからです。人間であるということは答えを探すということ。ユダヤ教では「赤ちゃんはすべての答えを持っている」と言われています。胎児はすべてを知っていますが、生まれると天使が来て、すべてを忘れてしまう。そして一生をかけて、そのお腹の中で知っていたことを思い出そうとするのです。この言い伝えーーすべての胎児がすべての知識を持っているという話が私は好きです。

 

ーー死ぬときにも答えは見つからないかもしれませんね。

 

 答えに近づくかもしれませんが、見つかることはないと思います。

 

 

 

bijutsutecho.com

 

 

展示を見ている時、なぜか(まだ実際に行ったことはないのですが、)アウシュヴィッツなどの強制収容所のことを考えていました。

作品の多くが、他人の人生や、誰かの不在について考えさせられる内容だったからかもしれません。

 

帰ってきてからウィキペディアの彼のページを見ると、おいたちについてこのように紹介されていました。

「1944年にナチス占領下のパリで生まれる。

父親は改宗ユダヤ人であったため、フランス人の母親と離婚して家を出て行ったように偽装し、家の床下に隠れ住んでいた。

終戦後母親やその友人から聞かされた強制収容所の話を含むこれらの経験がボルタンスキーのトラウマとなり、後年の作品制作に影響することとなる。」

 

ちなみに展覧会はズジスワフ・ベクシンスキーポーランドの画家)の作品が好きな人と行きました。作品の雰囲気はちょっとベクシンスキーと似ているような気もします。

 

東京・乃木坂の国立新美術館にて開催中~2019年9月2日(月)まで。

 

boltanski2019.exhibit.jp

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

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岩合光昭写真展『ねこづくし』に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

川崎市民ミュージアムで開催中の岩合光昭写真展『ねこづくし』に行ってきました。

 

行けそうな場所で、岩合光昭さんの写真展があると、足を運んでいます。

 

今回は「ねこ歩き」とは違って、日本国内の猫の写真限定です。

 

3部構成の展示の構成が面白いと思いました。

 

1部 島の猫

2部 日本各地のネコ

3部 やきものの里のネコ

 

1部の「島の猫」は今回初めて写真展で取り上げるテーマとのことです。

どれも可愛いこ満載ですが、3部の、瀬戸物など焼き物と一緒に写っているねこたちの写真群が良かったです。

招き猫の中に紛れていたり、鮮やかな器でおいしそうに水を飲んでいたり。

ねこはもちろんですが、ねこと焼き物の絶妙なアングルに、うつわ好きは目が離せません。(行ったことのある焼き物の街があるとなんだか嬉しい。)

 

各写真につけられているコメントは、岩合さん自身の言葉なのでしょうか。

「土足禁止」と札がかかっている軒下で毛づくろいする鎌倉の猫の写真に

「足はきれいにしています。」とあったりして、読むとくすりとしてしまいます。

 

日本各地の島でのびのびしているねこたちを見ると、今からなんだか夏休みが待ち遠しくなってきます。

 

神奈川県川崎市川崎市民ミュージアムで開催中~2019年6月30日(日)まで。

www.kawasaki-museum.jp

 

今回の展示で好きな写真は、佐柳島、香川県仲多度郡で、2匹そろってジャンプしている写真:

「リズムがそろう。」

です。

 

お近くの猫好きさんは見に行かれてはいかがでしょうか。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。f:id:hamletclone:20190613220707j:image

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キスリング展に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

東京都・目黒区の庭園美術館で開催中のキスリング展に行ってきました。

 

モイズ・キスリング(1891-1953)はエコール・ド・パリ(パリ派)の画家でポーランドの人です。

 

 

キスリングは、20代後半には画家として成功し、パリ派の陽気で面倒見の良いリーダーだった。「モンパルナスの帝王」とも呼ばれた。自殺したパスキン、アルコール中毒モディリアーニユトリロなど破滅型のイメージの強いエコール・ド・パリの画家たちの中では珍しく幸福な生涯を送った画家である。(ウィキペディアより)

 

 

静物画、人物画、風景画と、彼のいろんな作品が来日しているのですが、どれも印象が違う絵が多く、面白かったです。

憂いのある表情で、物静かな印象を受けるものが多い人物画に対し、植物を描いたものは生命力にあふれていて、絵の具の盛りも厚い作品が多かったです。

今回の展示作品の一つ、《カーテンの前の花束》1937年(展覧会ホームページでも閲覧できます)などからは、花が動きだしそうなエネルギーが伝わってきます。一緒に描かれているカーテンの柄も凄いです。

 

ユダヤ人であるキスリングは、第一次世界大戦ではフランスで外国人部隊に所属して負傷し、第二次世界大戦ではアメリカに亡命しています。

絵に描かれているサインが「Kisling」とファミリーネームだけなのは、ユダヤ人であることを伏せるため、と展示にあり、彼の生きた時代の大変さが垣間見えるようでした。

 

www.teien-art-museum.ne.jp

 

ウィキペディアに「面倒見が良いリーダー」とあり、周りの人とうまくやっていくことが上手だったのかな、と思いました。

 

戦争のない国で今生活できていることに、感謝の念を抱かざるをえません。

東京都庭園美術館(東京・目黒)にて開催中~2019年7月7日(日)まで。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

世紀末ウィーンのグラフィック展に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

目黒区美術館で開催中の展覧会、

京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック ―デザインそして生活の刷新にむけて」

を見てきました。

 

GWの真ん中くらいの日の午前中に行きましたが、お客さんはそれほど多くなく、小さなサイズの版画も見やすかったです。

 

本展では、1897年にグフタス・クリムトを中心にウィーンで結成された「ウィーン分離派(正式名称:オーストリア造形芸術家協会」の活動について紹介されています。

 

ウィーン分離派とは、当時の芸術家団体から離れたメンバーのことらしいです。

 

「世紀末のウィーンで展示会場を持っていたのはクンストラーハウス(kunstlerhaus)という芸術家団体であった。ウィーンの美術界は印象派の影響もほとんど見られず保守的であったが、その中でもオルブリッヒ、ヨーゼフ・ホフマンらの七人クラブ(Siebenerklub、オットー・ワーグナーの弟子たち)のように若手芸術家グループが生まれていた。

1897年、クンストラーハウスの保守性に不満を持つ若手芸術家らはクリムトを中心に造形美術協会を結成した。クンストラーハウスがこれを認めなかったため、クリムトらはクンストラーハウスを脱退した。こうして生まれたウィーン分離派には絵画、彫刻、工芸、建築などの芸術家が参加した。

ウィーン分離派は展示施設を持ち、展覧会の開催を行った。クリムトらはウィーン分離派の活動を通して新しい造形表現を追求した。ウィーン分離派ミュンヘン分離派(1892年)の結成に影響を受けているが、総合芸術を志向していた点に特徴がある。」

ウィキペディアより)

 

ウィーン分離派が発行した展覧会のカタログがたくさん展示されています。

 

浮世絵・工芸品などの日本美術が紹介された展覧会もあった(1900年)とのことで、木版画などは何となく浮世絵を彷彿とさせる作品もあり、不思議な感じがしました。

和紙を用いた版画作品も結構見られました。

 

また、エゴン・シーレの素描作品も数点あり、こちらも力強くて魅力的でした。

 

私が見たかったのは、展覧会のポスターで見た「三羽の青い鸚鵡」ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケル(1909年頃)という絵です。

鳥の羽や足などの細かい表現や、可愛らしい色使いに見入ってしまいます。

(展覧会のホームページでも紹介されていました。)

 

そしてなによりも出展数が多くて、なかなか見応えがありました。

 

文字のレイアウトや、囲み罫のデザインが好きな方はきっと楽しめるはずです。

  

2019年6月9日まで目黒区美術館(東京都目黒区)にて開催中。

mmat.jp

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

ムーミン展に行ってきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)にて開催中の

ムーミン展 THE ART AND THE STORY」に行ってきました。

 

訪れたのは平日、開館から10分くらい経っていましたが、中はお客さんが結構いました。

 

挿絵に使われた原画の展示が多く、サイズが小さい絵もありました。なので、人が多いと絵によっては見えにくいところもありましたが、渋滞してしまってどうしても見えない、という状態ではなかったです。

 

以下、印象的だった展示など。

 

①原画が多い。

作者トーベ・ヤンソンさんが自ら挿絵を描いたムーミンシリーズの原画が多かったです。

サイズは、「これは、今私たちが実際に手に取っている文庫サイズの原寸大なの?」と思うくらい小さいものもあり、トーベさんの細やかな性格が窺えます。

また、挿絵によってはキャラクターの表情が決定するまで何度も描かれたものもあり、作者のイメージ構築の過程がよく分かりました。

 

②見たことのないムーミン達の絵が多い。

環境保全のために書かれたポスターや、銀行の広告として使われたものなど、あまり見たことのない絵が多かったです。

新聞の挿絵にちょこちょこいるムーミントロールが可愛かったです。

 

③ファブリックやボードゲームなど、本以外の媒体に使われたムーミンの絵がある。

これらもまた新鮮なムーミン達でした。テキスタイル(布地)は明るい色使いが北欧らしくて、とっても素敵でした。布地になったムーミンキャラクターたちは、ミュージアムショップで絵葉書にもなっていました。

 

ムーミン以外の作品も多い。

トーベ・ヤンソンさんの他の著書や、彼女が手がけた『ホビット』シリーズの挿絵など、ムーミンとは少し違った世界も覗けます。フィンランドのレストランの壁画も、ムーミンとは少し趣きが違っていて、それもまた良かったです。また、トーベさんの愛用の道具など、創作活動をとりまく環境についての展示もありました。

 

 そして、行く前に予想はしていたのですが、案の定グッズが可愛いものばかりで、出てくるまでにたいへん迷いました。

 

(52階の会場をあとにして、エレベーターを降りると、また3階にもグッズがあるのが辛いです。)

 

布張りの展覧会の図録は、フィンランドにあるムーミン美術館の公式図録に倣ったものなのでしょうか。

企画展の図録らしくなくて、可愛いです。

 

瓶が可愛くて買ってしまいました。

中のココアビスケットも美味しかったです。

(原材料にシナモンとありますが、シナモンの香りは控えめでした。)

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東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて開催中~2019.6.16まで。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

 

moomin-art.jp

アルヴァ・アアルト展に行ってきました。

おはようございます。ゆまコロです。

 

東京ステーションギャラリー(東京・丸の内)にて開催中のアルヴァ・アアルト展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」に行ってきました。

 

アルヴァ・アアルト(1898-1976)はフィンランドの建築家、デザイナーです。

 

恥ずかしながら、彼の作品は椅子しか知らなかったのですが、他にも都市計画や絵画なども描いており、多岐にわたって活躍された方なのだということが分かりました。

 

良かったもの:
●パイミオのサナトリウム

パイミオはフィンランドの地名です。このサナトリウムの1室が復元されているコーナーが良かったです。洗面台が取り付けられている場所が高く、洗髪もできそうな形で、その使いやすそうなデザインに思わず蛇口をひねってみたくなります。(※残念ながら触れません。)

シンプルながらも居心地が良さそうで、泊まってみたくなります。(サナトリウムですが。)


●ヴィープリの図書館(ロシア)
決して派手だったり、奇抜だったりという建物ではないのですが、本が詰まっている写真を見ると、ここを訪れたくなります。受付カウンターへ誘導する、くにゃっと曲がった手すりが可愛いです。

波打つ天井がインパクトあります。大工さんはどうやって建てるのか、素人には見当もつきません。

 

イッタラのフラワーベースの型

この、雲のような形のフラワーベースが、彼のデザインだということを初めて知りました。ガラスを流し込む際の木型が展示してあるのですが、その隣で流れる工場の映像が面白かったです。たくさんの人が分業して、お店にやってくるんだなということが分かります。つい見入ってしまいます。

 

他にも、椅子の曲線を形作る曲げ木の展示や、その作り方の映像、照明の展示もあって、とても興味深かったです。

 

そして、展示室を出た部屋(ミュージアムショップの手前、自動販売機が置いてあります)にあった椅子が、とっても座り心地が良かったです。

この椅子に座って本を読みたい。

 

東京・丸の内の東京ステーションギャラリーにて開催中〜2019年4月14日まで。

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最後まで読んで下さってありがとうございました。

www.ejrcf.or.jp