おはようございます、ゆまコロです。
有島武郎は札幌農学校で講師をしていた32歳の時に結婚し、3人の息子の父親になりますが、すぐに妻と父親を亡くします。作家として軌道に乗るのは、その後のことです。
「小さき者へ」では、息子に向けた愛情が見て取れます。
お前たちの若々しい力は既に下り坂に向おうとする私などに煩わされていてはならない。斃(たお)れた親を喰い尽して力を貯える獅子の子のように、力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。
前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
行け。勇んで。小さき者よ。
また、彼の次の文章からは、書くことの苦しみと決意が見えるようです。
この道に踏み込んだ以上は、出来ても出来なくても人類の意志と取組む覚悟をしなければならなかった。私は終始自分の力量に疑いを感じ通しながら原稿紙に臨んだ。
創作がうまくいかなくなった頃、記者で人妻であった波多野秋子という女性と知り合い、恋仲になります。しかし、秋子の夫に知られる所となり、有島は脅迫を受けて苦しみました。その後、2人は長野県軽井沢の別荘で縊死(首吊り)します。
短編でしたが、力強い文体はとても好感が持てました。
ハーバード大学で学び、ヨーロッパへも渡った彼が、自ら命を絶たなければ、もっと多くの作品を残していたかもしれない、と思うと残念です。
最後まで読んで下さってありがとうございました。