ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

『ハムレット』を観てきました。

おはようございます、ゆまコロです。

 

2024年5月某日、さいたま芸術劇場にて、『ハムレット』を観てきました。

 

これまでの人生で読んだ本で、ゆまコロが一番好きな話です。

このお話の観に行けそうな公演や映画は、出来るだけ観に行っています。

コロナ禍もあってなかなか見られなかったので、今回は久々のハムレット観劇です。

 

故・蜷川幸雄さんからシェイクスピアシリーズのバトンを引き継いだ吉田鋼太郎さんが演出しています。

翻訳は小田島雄志さん。

 

話が大好きすぎて見るたびに毎回いろいろ言いたいことが出てくるので、感動を忘れないように記しておきます。

※途中、腐女子的な感想に傾いていますので、ご注意下さい。

 


【城壁で亡霊が出るシーン(第1幕第1場 )】

 

 会場が暗くなってからすぐ見張り同士の会話が始まります。

 まだ会場は割とざわざわしています。展開が早くて驚きました。

 登場する見張り同士顔も見えない真夜中に、合言葉でお互いを確認する場面なのですが、観客からも舞台の人の表情は見えないくらい暗いです。おまけに一緒に観ていた母は、このシーン、早口で何言ってるのか分かんなかったとあとで言っていました。初見で何の話をしているか分からないと、なんのこっちゃとなって話に入っていきにくいかも。

 幽霊の噂を確認するところなので緊迫感を表現してるのかもなのですが、最初の城壁シーンはもうちょっとゆっくり見せてくれても良かった気もします。

 もっとも、ここで出てくる人物でのちのちまで重要なのはホレーシオくらいなので、混乱っぷりと、おどろおどろしさが伝われば、それで良いのかもしれません。

 


ハムレット初登場のシーン(第1幕第2場)】

 

 王様、王妃、レアティーズ(ライバル)、オフィーリア(恋人)など勢揃いのシーンです。

 叔父さん(クローディアス;吉田鋼太郎さん)は、第一声からよく声が通っていて、いかにも舞台〜って感じの発声でした。堂々としていて、惚れぼれします。ぴったりです。吉田さんはハムレットのお父さん(亡霊)役もされていたのですが、終始一番発声が聞き取りやすく、他のみんなを引っ張っている感じを受けました。

 

 ここで初めて出てきたハムレット柿澤勇人さん)の、最初の演技になにかいろいろ感じるものがあったはずなのですが、見張り役のマーセラスの名前は覚えていたのに、同じく見張りのバナードーの名前が思い出せなくて、迷った挙げ句、大きな声で「今晩は!」とだけ言ったシーンが可愛くて、感想は吹き飛んでしまいました。

 

 

【レイアティーズがフランスへ旅立つ前のシーン(第1幕第3場)】


 オフィーリアとレアティーズ、別離の前に追いかけっこしています。仲の良い兄妹っぽいのが出てて、見ていて幸せです。

 考えてみると、ハムレットの家族はお父さんが暗殺されたりお母さんが再婚ほやほやだったりしてバタバタしているけど、父ポローニアスと息子レアティーズ、妹オフィーリアの家族は、みんなそれぞれ仲の良さが際立っています。

 特に兄と妹が親密だと、この後のオフィーリア死去の際、お兄ちゃんの悲壮感が際立って良いなあと思って見ていました。

 

 

【旅役者の一行が城に来るシーン(第2幕第2場)】

 

 トロイ戦争のお芝居のさわりをやってもらうシーンなのですが、ここからハムレットの計画が始まって大きく話が動くので、どんなふうに演じられるのか、個人的にいつも注目している場面です。

 ハムレットのリクエストに応えてセリフを言う旅役者(櫻井章喜さん)、凄くうまい。翻訳からもともと格好いいセリフ回しなのですが、第一声までの間が絶妙で、ドキドキしました。

 演技を見ていたハムレットが涙ぐむというシーンなので、たいてい上手にやってくださる方が多いのですが、こちらも引き込まれました。

 この後、父が殺された場面を叔父の前で再現しちゃおう、というハムレットの動機づけになるだけの説得力がある演技でした。

 

 

【ポローニアス、ハムレットの様子を伺うシーン(第2幕第2場)】

 

   ポローニアスがハムレットの狂気を探ろうと話しかけて、逆に馬鹿にされるシーンです。

    ここは結構ユーモラスな場面なのですが、ポローニアスの演技が大人しめでさらっと流れていったのが気になりました。希望としては、ポローニアスは、もうちょっと空気読まない感じにして欲しい。

    それでなくても、今回ポローニアスのとその従者レナルドーの場面(レアティーズにお金を届けるよう指示する、ちょっとほっこりする場面)がカットされているというのに、ここであなたに笑いをとってもらえないと、この先意外と辛いのですが、と不安になりながら見ました。

 

 

ハムレットがオフィーリアへ尼寺へ行けと言うシーン(第3幕第1場)】

 

 オフィーリア、ハムレットの強い口調に困惑してるっぷりがよく出てます。

 ここでのオフィーリアは「もともとお前を愛してはいなかった」と言われて、困惑後、悲しみに暮れるというのがお決まりの反応だと思うのですが、北香那さんのオフィーリアからは、ハムレットと話していて、相手が得体がしれないものに見えてきているというか、ハムレットのことがだんだん嫌になってきてる感も伝わってくるようで、同じ女性としてちょっと親近感が湧く感じでした。

 

 

【みんなで芝居を見る前のシーン(第3幕第2場)】

 

 芝居を見る前に、ハムレットがホレーシオ呼ぶの可愛い。小田島さんの翻訳ではこんなに連呼はしていなかったと思うけど笑

まだ舞台に登場もしていないのに遠くから何度も呼んでいます。

 もともと、

「激情の奴隷ではない男、そういう男がいたらおれはこの胸に、胸の底に、固く抱きしめるだろう、いや、いま抱きしめている。きみという男をな、ホレーシオ。」

って言ってるシーンなんだけど、それにしてもちょっとくっつき過ぎじゃない?こんなにお互い抱擁し合ってるなんてことがあっただろうか。もっとやっていいのよ。

 このホレーシオへのベタ褒めっぷり、主人公の中でのローゼンクランツ&ギルデンスターンとの扱いの落差が目立ってよい。

 このシーン、死ぬ前の走馬灯にしてリプレイ再生したい、と思って真剣に観ました。

 

 

ハムレット、王妃の居間で母と話すシーン(第3幕第4場)】

 

 息子の狂気にお母さんの怯えっぷりが求められるシーンです。ハムレット、かなり本気で罵っています。 

 クローゼットシーンと呼ばれる母と息子のこの場面は、なんか知らないけど濡れ場のようにやらしいことが多いのですが、今回は特にいやらしかった。

 母にハムレットが馬乗りになるだけでもハラハラしているのに、観ている方がいたたまれない気持ちになるので、お母さんの胸を揉むな。

 息子が目の前でポローニアスを殺すので、母役には怖がってほしい気持ちはあります。 しかしお母さんも、理不尽でも虚勢でもいいから、もうちょっと母親らしくというか、上から目線感を出して欲しい。息子に対して本気で怖がってて、お母さんの悲鳴しか聞こえんがな。

 割と、「早く終わってくれ」と思ってしまう場面でもあります。

(力いっぱい演じてくださっているのにごめんなさい。)

 

  同じ人が演じているので当たり前なのですが、前の夫(ハムレットの父)の肖像画も、今の夫(クローディアス)の肖像画も同じ顔なのが、ちょっとウケました。

 

【レアティーズがフランスから帰国するシーン(第4幕第5場)】


 レアティーズ、お父さん(ポローニアス)を殺されたというのに、純粋というか、口調からそこはかとなくいい子なのが出ています。かといって、あまり王様(クローディアス)のことを信頼しすぎていないというか、クローディアスにへりくだってないのも好感が持てます。

 渡部豪太さんは「ふるカフェ系 ハルさんの休日」を観たことがありましたが、ぜんぜんイメージが違っていて、とても良かったです。ハムレットのライバルとして対峙しようという覚悟が伝わってきました。

 決闘シーンは本当のフェンシングの試合のようで迫力がありました。途中で2人の剣が入れ替わるのもスムーズです。

 

 会期が始まる前に、駅でこのポスターに写っている柿澤さんを見て、満面の笑みだったので、あっ、なんか大丈夫そうかも、と勝手に思っていました。ハムレットという人物像を分かったというか、自分で掴んでいなければ、ここで笑顔は出来なさそうな気がしたからです。(偉そうですみません。)

 

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 今回の戦利品。

 パンフレットだけ買おう、と行く前に決めていたのに、

眼の前にしたら、「HAMLET」と書かれているグッズには抗えませんでした。

 かわいい巾着にはゼリーが入っています。観劇中、お腹が空きすぎて、休憩中に完食してしまったため、中身はカラです。

 

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 400年以上前に書かれたこの話を、演じる人がいて、面白がってくれる人がいて、日本語に翻訳してくれた方もたくさんいて、未だに関わってくれる方がいて、ずっと愛されてきたのだなーと思うと、いちファンとして心の底から幸せな気持ちになります。

出会えて良かったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。