ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

おはようございます、ゆまコロです。

 

チョ・ナムジュ、斎藤真理子(訳)『82年生まれ、キム・ジヨン』を読みました。

 

この物語は、1982年生まれのキム・ジヨンという女性が、心療内科を訪れたときの記録として書かれています。

 

生い立ちをさかのぼるたびに出てくる、思い出が辛いもの満載で、どこを取り上げるべきか迷います。

個人的に「ああ…」とへこんだのが、会社での新しいプロジェクトに参加できなくて落ち込んだジヨンさんが、その後の飲み会で聞いた話です。

 

キム・ジヨン氏はその飲み会で、たくさんの話を聞いた。企画チームの人材構成は完全に社長の意思で決まったものだという。有能な係長級の人たちが選ばれたのは仕事をしっかりと軌道に乗せるためで、二人の同期が抜擢されたのは、これが長期プロジェクトだからだそうだ。社長は、プロジェクトの特性と困難さから見て、業務と結婚生活、特に育児との両立が難しいことをよく知っており、そのために女性社員は員数に入れていなかった。だからといって社員の福利厚生の向上に努めるつもりはない。続けられない社員が続けられるための条件を整備するより、続けられる社員を育てる方が効率的だというのが社長判断だったのだ。実は、それまでキム・ジヨン氏とカン・ヘス氏に難しいクライアントを任せてきたのも、同じ理由からだった。二人の女性を男性より信頼したからではなく、ずっと会社に残っていっぱい働く男性たちには、やる気をなくさせるような辛い仕事はあえてさせないのだった。

 

 キム・ジヨン氏は迷路の真ん中に立たされたような気持ちになった。誠実に、落ち着いて出口を探しているのに、出口は最初からなかったというのだから。それで呆然と座り込んでしまえば、もっと努力せよ、だめなら壁を突き破れと言われる。事業家の目標は結局お金を稼ぐことだから、最小の投資で最大の利益を上げようとする社長を非難はできない。だが、すぐ目の前に見える効率と合理性だけを追及することが、果たして公正といえるのか。公正でない世の中で、結局何が残るのか。残った者は幸福だろうか。」(p116)

 

ジヨンさんがこれまでに遭遇した出来事が一つ一つ、とてもリアルで、なんだか他人事には思えませんでした。彼女がまじめで正直で努力家なので、彼女が落胆したり、理不尽さにやりきれなくなるたびに、一緒にお茶して話を聞いてあげたくなります。フィクションですけど。

 

身の振り方を考えさせられる本です。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)