ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

亀山郁夫『ドストエフスキー 謎とちから』

おはようございます、ゆまコロです。

 

亀山郁夫ドストエフスキー 謎とちから』を読みました。

 

この作者が訳した『カラマーゾフの兄弟』を以前読みましたが、その時の巻末に載っていた読書ガイドより、この本のほうが分かりやすくて面白かったです。作者の主張がよく出ているのもいいと思いました。

 

監獄から出てきて人妻を好きになったりするあたり、ドストエフスキーの人生は、彼の小説によく似ていると思いました。

 

「半年後の八月、彼女の夫が急死したとの知らせが届き、ドストエフスキーは軍規をおかしてクズネーツクに駆けつけるが、そのときにはすでに彼女に新しい恋人がいて、いきなり三角関係に巻き込まれてしまった。ところが、そこで小さなカタルシスが起こり、彼はマリアの恋人のために献身的な振舞いに及びはじめた。そのカタルシスとは、ひとつには、「三角形」のしがらみからみずからを解放するためのある種の本能的な防衛策だったのだろう。」

 

不毛な行動だけど、分からなくもないです。

 

ドストエフスキーは彼ら(分離派や異端派)の現世否定に、「真実に対する強烈な希求と、現実に対する深刻な不満」があることを見てとった。鞭身派にせよ去勢派にせよ、逃亡派にせよ、信徒の中心をなしていたのは農民である。ドストエフスキーのなかにそうした農民たちに対する強いシンパシーがあった。その一方で、彼らの熱烈な真理探究の熱と、解放への憧れの結果として異端派があるという矛盾にも気づいていた。その事実を彼は、現世の教会が何ひとつ救いえていないことのしるしと受け止め、彼ら異端派こそが、ロシアの民衆のもっとも根源的な部分であるという理解に達していたのかもしれない。」

 

鞭身派(フルイストウイ)…異端派の中で最大の派閥。儀式(ラジェーニエ)は一種の性的乱交と化し、著しい退廃を生んだ。生まれた子どもは共同体で育てる習わし。

 

★去勢派…原始的なアダムとイブの神話的楽園への回帰、原罪の回避を源とする。罪なき天使のような身体を取り戻すための方法として去勢を行う。肉欲を退けるかわりに、宝石や金品を崇拝して蓄財に励む。

 

ドストエフスキーの大衆的な視点がすごく好きです。

 

ドストエフスキー作品ではほかに、『白痴』と『未成年』が面白そうだと思いました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

ドストエフスキー―謎とちから (文春新書)

ドストエフスキー―謎とちから (文春新書)