ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

投資から見る人間の心理。『せめて25歳で知りたかった投資の授業』を読んで 

おはようございます、ゆまコロです。

 

三木紀房さんxファイナンシャルアカデミーさんの『せめて25歳で知りたかった投資の授業』を読みました。

 

 「まだ上がる…!」と思い始めたら危ない

 

「感情なんて捨ててしまえ! ロボットになるんだ」
 こんなことを言われたら、あなたはどう感じるでしょうか。
 頭に来る人もいるかもしれません。喜怒哀楽こそ人間が人間であるゆえんであり、喜怒哀楽という感情があるからこそ、映画や音楽などの文化が生まれてきました。恋愛だって、感情なしには成立し得ない代物でしょう。 ロボットになれなどと言われたら、人間の尊厳を失ってしまうような気持ちになります。

 しかし、投資の世界は別です。 感情に囚(とら)われたがために、手痛い損失を被るケースが多々あります。 そんなことになるぐらいなら、感情なんて捨ててしまえばいい 。むろん、ロボットになるのは投資をする間だけで構いません。終わったら思う存分喜怒哀楽を楽しんでいただければと思います。
 感情を排して投資を行うことができれば、持っている株の値段が変化したとき、躊躇なく売ることができます。 この「躊躇なく」がとても大切なのです。

 値上がりを期待して1000円で買った株があるとします。ある日、予想に反して950円に値下がりをしました。5%の下落です。
 最初は、誰しもがこう思います。
「えっ、たった5%下がっただけで売らなきゃいけないの? またすぐに元に戻るかもしれないのに、なんてもったいない」
 もったいない――こんな言葉が頭をよぎったとしたら、これこそ「罠」です。 『インベスターZ』でも、孝史が投資部主将の圭介からキツく言われたのは、「5%下がったら売れ。法則を自分の上位に置き、感情をなくせ」というルールでした。
 このルールに則れば、株価が5%下がった時点で、売りを実行しなければなりません。
 株価が下落しているときに株式を売却することを「損切り」と言います。

 

 簡単なことのように思えますでしょうか? でも、これがなかなかできません。
人間が、感情に囚われてしまう生き物だからです。もったいない。悔しい。あるいは、自分が信じて買った株価の下落を認めるのがつらい。実に様々な感情が入り混じって、決断ができなくなってしまいます。

 逆の場合はどうでしょうか。1000円の株が10%分急に上昇して、1100円になったとします。
「いやー、10%上がったらまだ上がるかもしれないし、取り敢えず持っておきます」
 こう思ってしまう方がほとんどではないでしょうか。
これも、投資の鉄則に反した判断です。まだいける。もっと大きく稼げる……損をして売りの判断ができないときの感情と、大差はありません。20%上がるかも、いやもっと――と考えているうちに株価は下落するかもしれません。そうなったら、元も子もありません。こういった感情に支配されてしまった人が、バブルのときに莫大な損失を被ってしまったりします。バブル状況下では、多くの投資家が「もっと上がるかも」という誘惑に駆られているため、適切なタイミングで売り抜くことができないのです。
 ロボットになりきり、10%上がった時点で迷いなく売る。ここではある意味、「考えない」ことが重要です。 こうして、株価が上昇しているときに株式を売却することを、「利食い」と言います。

 

 投資の暗黒面に堕ちないために

 

 ところで、なぜ損切りは5%で利食いは10%なのでしょうか。
 これには、極めて合理的な理由があります。
どんな優良株であっても、上がるか下がるかは誰にもわかりません。常にどちらに転ぶかわからない状況で進んでいきます。 こればかりはどんなに訓練を積んでもどうにもなりません。
 ただし、自らにルールを課すことで、ある程度のコントロールができるようになります。
 損切り利食いに明確な数値基準を設定することがまさにそうです。
 仮にあなたが10万円分の株を持っていたとして、その株の売り買いを10回繰り返したとしましょう。
 5%で損切り実行なら、「5%×5回で損失は25%」。 10%で利食い実行なら、「10%×5回で利益は50%」になり、実に25%もの違いが出てきます。
 投資の世界で「損小利大」と呼ばれる鉄則で、これを積み重ねていくことが大切です。

 投資の上級者は、どちらも巧みに実践します。
 損切りは、自らの失敗を認めることにもなりますが、将来利益をあげるために必要なコストです。要するに、失敗をムダにしないということですね。
 また、利食いによる利益確定は、何にも勝る成果です。もちろん、上がったからといってすぐ売らずに10%よりも20%、30%上がった方が成果は大きい。しかし、売却して利益を確定させない限り、それはただの皮算用でしかありません。
 10%上がった段階で、利食いを実行し、次の投資へと備えるのが賢明な判断でしょう。

 いったん利益を確定させると、人は冷静な判断ができるようになります。

(p56)

 

株の損切りってどうやってやるんだろう、と思っていましたが、やはりルールがあるんですね。「1000円で買った株が950円に値下がりをしたとき」、売るかと聞かれたら売らない気がします。

「1000円の株が1100円になった」ときも、まだ持っている予感がします。

ただ、「5%で損切り実行なら、「5%×5回で損失は25%」。 10%で利食い実行なら、「10%×5回で利益は50%」になり、実に25%もの違いが出てきます。」

というのはすごく分かりやすいです。

 

 「暗黒の木曜日」を切り抜けた投資家


 先ほど、巨大で複雑な株式市場の未来を100%予測することはできないと書きましたが、実は、歴史上名高い金融大パニックを予測した投資家がいます。 7時間目にも登場したジェシー・リバモア、アメリカの投資家です。

 

 彼は1929年の「暗黒の木曜日」 (ウォール街大暴落。 ブラック・サーズデーとも呼ばれる)を予測し、巨額の利益を得ました。 まず、暗黒の木曜日の中身から解説していきましょう。
 この大事件が起きた当時のアメリカは、第一次大戦と第二次大戦の間。 「永遠の繁栄」と呼ばれた時代で経済は絶好調を迎えていました。「狂騒の20年代」とも呼ばれた時代です。
 映画『華麗なるギャツビー』(監督バズ・ラーマン、2013年)はこの時代を描いた作品ですが、富裕層は豪勢なパーティに夢中。 投資家は多額の借金をしてでも株にお金を回し、銀行も融資(企業にお金を貸す)を差し置いて、株に多くの資金を投下していました。株式市場の株価は、1924年から5年間ずっと上がり続けていましたので、「まだ上がるぞ」 「この流れはずっと続く」と誰もが確信してやみませんでした。
 しかし、そんな狂騒は暗黒の木曜日をきっかけにドン底に突き落とされます。

 木曜日に株価暴落が起きると、金曜、月曜、火曜と、破滅的な暴落劇が続きます。以降3年にわたって株価の下落は続き、ダウ工業平均と言われるアメリカの株式指標は80%も下落しました。(ちなみに100万円投資していると、11万円まで目減りする下落幅です)
 多くの投資家が財産を失うなかで、ジェシー・リバモアは「空売り」と呼ばれるテクニックを駆使し、自らのお金を増やしていきます。 空売りとはリスクが高く上級者向けのテクニックなので、ここでは説明は省きますが、株価が下がる局面で利益をあげられる手法です。 暗黒の木曜日による下落幅は極めて大きく、空売りの効果も絶大でした。
 なぜジェシー・リバモアは、「狂騒の20年代」の終わりを予見できたのか。そのヒントはこんな言葉のなかにあります。


ウォール街に、あるいは株式投資・投機に新しいものは何もない。ここで過去に起こったことは、これからも幾度となく繰り返されるだろう。この繰り返しも、人間の本性が変わらないからだ」
(p70)

 

アメリカの投資家ジェシー・リバモアさんは生涯に3回結婚して4度破産して、最後は自殺を遂げています。

世界恐慌の引き金となった暗黒の木曜日1929年10月24日の翌日、リバモアさんの利益は1億ドル(現在の貨幣価値で4000億円)以上だったそうです。

(それなのにこの後に一度破産しています。)

この人に関する本も気になります。

 

そしてこの本の中にたびたび登場する『インベスターZ』を読んで、もう少しお金のことを勉強しようと思いました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。