ニジタツ読書

読んだ本の感想です。胸に刺さった言葉をご紹介します。時々美術館のことなども。

小渕千絵『APD「音は聞こえているのに聞きとれない」人たち』

おはようございます、ゆまコロです。

 

小渕千絵『APD「音は聞こえているのに聞きとれない」人たち 聴覚情報処理障害(APD)とうまくつきあう方法』を読みました。

 

 APD=聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder)とは、

 

聴力に問題はなく音は聞こえているけれど、人の話し声(音声)を情報として認知するのが困難な状態、つまり、耳から入ってきた音の情報を脳で処理してことばとして理解する際に、なんらかの障害が生じる状態。

 

のことらしいです。

 

海外のデータには、夫婦げんかのタネになりやすい「妻の話を聞かない夫」の約4割は、「聞き取り困難」であるという報告もあるそうです。(p2)

私は時々聞き間違いがあり、TVは字幕を出すと安心することもあるので、少し気になって手に取ってみました。

 

聞き取り困難である要因には、様々なタイプがあり、その違いによって症状や対処法が異なるそうです。

 

【大人のAPDの4タイプ】

  1. 脳損傷タイプ(脳梗塞脳出血の影響で、耳から脳に伝わる片側の中枢聴覚系(耳から脳までの経路)の途中でダメージが生じている。)   →検査で症状を明らかにし、周りの環境調整を行うなどの対処が必要。
  2. 発達障害タイプ(ASD自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害)などを原因とする。最も多いが、見極めが難しい。)   →自分が弱いのは注意力なのか記憶力なのかというように、自分の特性をはっきりとさせ、対処を考えていくことが大事。
  3. 認知的な偏り(不注意・記憶力が弱い)タイプ(相手の話に注意を傾けて集中する、あるいは話の内容を理解しながら記憶を更新していくことが苦手なタイプ。著者はタイプ2に分類される人も、こちらに含めて対処した方が良いのではないかという意見を展開している。)   →どちらの認知機能がより弱いのかを検査を使って明確にし、注意力が弱ければ、自分なりに注意喚起する方法を見つけたり、まわりの理解を得て情報を得やすいようにする方法を探す。記憶力が弱ければ、チャンク化(バラバラな情報を自分で都合のいいようにグループにまとめる作業のこと)や、イメージ化(文字情報を絵や映像で覚えること)などの記憶スキルを身につけることが一手。
  4. 心理的な問題タイプ(ストレスや心理的な問題が原因)   →専門的なカウンセリングが必要なこともあるが、ストレスの原因を見つけ、それを取り除くことが第一。少しでも困りごとを回避しつつ、APDと上手につきあいながら、毎日を前向きに明るく過ごす。

 

また、本書で興味深いと感じたのは以下の内容でした。

 

カクテルパーティー効果

 とくに聴覚に問題がなくても、ザワザワ、ガヤガヤしているパーティー会場などに入ると、だれが何をしゃべっているのか、すぐには判断がつきにくいものです。

 ところが、話したい相手や聞きたい会話に注意を向けると、まるで周囲の騒音が消えたかのように、ことばがわかるようになります。

 この現象を説明するおもしろい実験結果があります。雑音下でことばを聞いたとき、大脳の聴覚野がどのような反応を示すのかを調べたものです。

 その結果、一時聴覚野では音声に対する反応が下がることがわかりました。これは、音声に雑音が重なると音声そのものは小さく聞こえますが、音が小さいということはそれだけ音の刺激が小さく、その結果、脳の反応も下がるためです。その先の二次聴覚野以降でも、あえて音声を聞きとろうという意識をしなければ、反応は小さいままです。

 ところが、「聞きとろう」と意識をして音声に注意を向けたとたんに、小さい音に対する二次聴覚野以降の反応は大きくなります。つまり、物理的には雑音に混じって小さいはずの音に注意を向けると、脳は注意を向けた音を処理する神経回路を増強し、それを大きく感じられるように働くのです。

 要するに、脳は、一度にいろいろな音がたくさん入ってくると、そこから選んで一部だけを大きくして聞きとる能力があるということです。

 このことから、脳は膨大な情報を処理するために活動を偏重させ、選択して処理をおこなう効率的な働き方をしていることがわかります。

 こうした脳の機能を「カクテルパーティー効果」といい、両耳聴機能も関与するとされています。

(p73)

 

意識していなくても、耳はうまく機能してくれているんだなと感心しました。

 

睡眠障害の人にも、聞きとり困難の症状が出ることがあります。

 寝不足になると日中のパフォーマンス能力が落ちることは、だれしも経験上ご存じだと思います。これは、睡眠が不足すると昼間でも眠くなって覚醒度が下がるためです。

 覚醒度が低いと一生懸命注意しようとしても、意識そのものが低く全体の注意量が少なくなって、不注意傾向になってしまいます。覚醒の中枢は脳幹の網様体賦活系(もうようたいふかつけい)と呼ばれる領域ですが、ここは注意の中枢のひとつでもあります。

 そのため、覚醒レベルが下がると、注意力も影響を受けて下がりやすくなってしまうのかもしれません。

 仕事にしろ勉強にしろ、何か作業をするときは、目的に対して注意を向け集中することが必要ですが、睡眠不足で覚醒度が下がってしまうと集中力がつづかず、作業能力が下がってしまいます。

 これは、話を聞くときも同じです。睡眠不足のときは、相手の話を聞いている途中で意識が一瞬ぼんやりして、ことばを聞き漏らしたり、聞き漏らしたことばを会話の流れから推測したりすることがむずかしくなり、聞きとりに影響をおよぼします。(中略)

 なかなか寝つけないとか、すぐに目が覚めるとか、睡眠障害のある人は、APDの前にまず睡眠に対する治療を受けることをおすすめします。睡眠状態が改善すれば、聞きとり能力も改善するといえます。

(p155)

 

 私が視察に訪れたドイツのミュンヘンにあるインクルーシブ教育(障害のある子どもと障害のない子どもとがともに教育を受けること)を実践している学校では、すでに「聾学校という聴覚障害の子どものための学校という形態ではない」と話されていました。

 APDと診断された生徒、健聴の生徒は同じ教室で学んでおり、健聴児以外には、それぞれに必要な補聴機器を使っているのです。聴覚障害生徒は、補聴器や人工内耳、APD生徒は机の手元の装置にヘッドホンを取りつけて聞いていました。

 先生は送信マイクを使い、生徒たちは発言する際には手元のマイクで話します。健聴児はもちろん肉声を聞き、聴覚障害生徒やAPD生徒は補聴機器あるいはヘッドホンを通して、しっかりと先生や同級生の声を聞くことができるのです。

 学校には心理の専門職やソーシャルワーカーが常駐していて、APD生徒を含めた生徒たちの日常的な困りごとや、心理的な支援をおこなっており、そうした配慮の効果は明らかだということでした。

 生徒たちはその後、職業専門学校に進み、職業訓練を受け、さらには専門的な支援も受けます。このような小児期からのていねいな支援によって、社会の中で過ごしていく力を身につけることができるのです。

 このため、社会に出ても困りごとを感じる人が少ないために、いわゆる「大人のAPD」をいう成人期に自覚する例は少ないのではないかと思います。

(p174)

 

このミュンヘンの学校の実践を取り入れるとしたら、日本にはどんな課題があるだろうかと考えました。

 

APDは聴力には異常がないことが大前提なので、聞きとりにくさを感じたら、まずは聴力検査をして、ほかの聴覚障害である可能性をできる限り取り除いておくことが第一と本書では述べられています。

 

その他、著者が聴覚トレーニングとして挙げている方法として、次のような事があります。

 

・ラジオのトークに耳を傾ける。(電波にのって聞こえてくる、ノイジーな声を聞いて理解しようとすることで、聞きとる力を鍛えることができる。)

・朗読CDやオーディオブックの内容をイメージしながら聞きとる。

・読んだ記事や聞いた話の要約をしたり、感想や考えをまとめ、語彙力を増やす。(話を理解する力をつけると、聞きながら推測する力も高くなる。また、子どものAPDには読書が一番だが、読みたがらない場合は語彙力ドリルや、「みみなぞ」(謎解きCD)などの教材を活用する。)

 

これらも、取り入れやすそうだと思いました。

 

私が聞き間違いが多くなるのは、眠気を感じているときであるようだったので、意識して生活習慣を整えたいと思いました。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。