ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

ヴァレンティナ・キャメリニ『グレタのねがい』

おはようございます、ゆまコロです。

 

『グレタのねがい』ヴァレンティナ・キャメリニ、杉田七重(訳)を読みました。

 

 みんながグレタにインタヴューをしたいといってきて、世界中から集まったジャーナリストが山のような質問をグレタにぶつける。ストライキをしようというのは、どこから思いついたの?ご両親や先生はどう思っている?15歳の女の子が環境に興味を持つようになったきっかけは?

 グレタは質問にすべてこたえていった。ただし自分自身のことについてはあまり話したくなかった。話題としては地球の問題のほうが、自分のことよりよっぽど重要だし、人々も関心を持っている。それでもグレタはテレビ放送に出演し、スウェーデンの都市数か所で行われた会議にも参加した。

 知らない人を大勢相手にするのは気疲れするものだが、グレタは問題は深く理解していたから、気候変動に関することは、なんでも明確に話すことができた。

 そんなわけで数年もすると、グレタは気候問題の専門家と変わらないまでになった。

 アメリカの有名な雑誌『ニューヨーカー』がグレタにインタビューし、記事のなかで、温室効果ガスは減ってきていると書いたときには、迷うことなく、それはまちがっていると指摘した。有名な雑誌の記者が書いたものであろうと、真実でないことを書くのはまちがっている、正直にならないといけないとうったえた。

 地球温暖化は複雑な問題で、これを語るときには、あらゆる種類の統計が引き合いに出される。政治家は自分にとっていちばん都合のいい統計をつかって、事態は改善されてきているように見せかけ、事実の深刻さを覆いかくすことが多い。

 けれど、人々には真実を知る権利がある。ほんとうは大変なことになっているのに、大丈夫だと自分をだますのは、子どもじみている。

 そのことを大人の政治家に教えたのが、15歳の子どもだったというのは、まったく皮肉なことだった。

(p50)

 

自分のことよりも重要なことを話したいと思っているのに、そうさせて貰えない状況は相当なストレスが溜まりそうです。

 

 熱心な活動家と同じように、グレタもヨーロッパ中を旅して、環境を守るためのストライキを組織し、スピーチ原稿を書いたり、プレゼンテーションの準備をしたりする。何千人もの人たちをまえにスピーチをするには、あらかじめ下調べが必要で、大事な情報をもらすことなく、たくさんのことについて細部までくわしく知っておかねばならない。それもときには外国語でスピーチをするのだから、準備はほんとうに大変だった。

   しかもやるべきことはそれだけではすまない。いまや有名人となったグレタは、世界じゅうのジャーナリストからインタビューを受けてもらえないかといわれ、有名なリポーターたちはグレタ自身のことや、グレタが考えていることについて、すべてを知りたがった。自分のことを話すのはあまり気が進まなかったが、インタビューは受けることにした。それによって環境問題が新聞の一面にのり、世間の関心を高めることができるからだ。

 これらにくわえて、グレタには、大人の活動家にはない務めもあった。15歳の女の子が当然やるべきことだ。学校の宿題をやり、授業でもみんなに遅れをとらないようにしなければならない。グレタはまた学校に通いはじめ、金曜日だけ学校を休んでストライキに出かけるようになっていた。さらに毎週末には町の中心に出ていって抗議活動をする。雨が降ろうと雪が降ろうとおかまいなしに出ていき、厳しいスウェーデンの冬をものともせず、どんなに寒くて暗い日でも外に出ていった。

 朝早くから夜遅くまで、集中して取り組むべきことが山ほどあった。妹のベアタや両親、それに2匹の飼い犬と過ごす時間もあまりなくなった。眠る時間さえ十分にとれなくなった。グレタは毎朝6時に起きて、新しい一日とむきあう。疲れを感じたときには、三つ編みの少女である自分がここまで有名になった原因を思い出し、深く息を吸ってまたまえへ進んでいく。

 グレタがまた学校に通うようになって、優秀な成績を収めているので、両親は安心して娘を支援することに決めた。

(p67)

 

この努力、本当に頭が下がります。

疲れている時の彼女を想像すると切なくなりますが、それを傍に置いておいても動かなくてはならない、と思うような事柄が果たして自分の境遇にあっただろうか?と考えると、ぼんやり生きている感に苛まれます。

 

若い女性たちに導かれて、若者が自分の考えをはっきり表明する。それには心を大きくゆさぶられます」とパリの市長、アンヌ・イダルゴがいっている。

 自分を批判する人に対して、グレタはこうこたえている。

「大事なのは、気候の変動について研究する科学者や学者の言葉に耳をかたむけて、問題に対する正しい知識を得ることであって、わたしが学校を休んでいることではありません。それは重要ではありません」

 環境活動家として有名になったグレタは、アスペルガー症候群についても、よりよい理解がなされるようにつとめている。グレタのようにアスペルガー症候群と診断された子どもは、新しい友だちをつくりにくく、人と接したり、おしゃべりをしたりするのが苦手といわれるが、ときにすごい才能を発揮することもある。グレタが身をもってそれをしめした。

(p86)

 

彼女自身も学校を休むことはいいことではないと思っているけれど、休んで抗議活動をしなければならないほど環境問題が危機的な状況にある、と常に声を上げ続けています。そんな姿勢を見ていると、こちらももっと現実を受け止めなくてはならないと思わされます。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。