こんにちは、ゆまコロです。
ジョン・グリーン、金原瑞人・竹内茜(訳)『さよならを待つふたりのために』を読みました。
エド・シーランの「All of the Stars」という曲のMVを見て、どんな話なのか気になり手に取ってみました。
「でも、忘れられるのが怖いんでしょ」
「そう、この世界から忘れられるのが怖い。けど、おれの親をまねる気はないけど、人間には魂があって、魂は消えないんだ。おれがいう忘れられる恐怖はまた別だ。自分の命を引きかえにしても、なにも残せないんじゃないかっていう恐怖だ。立派な人生を生きられないなら、せめて最後くらいは立派に死にたいと思うだろ?おれが怖いのは、意味のある生き方も死に方もできずに終わることなんだ」
私はなにもいわずに首を横にふった。
「どうした?」
「ガスが執着してるその、意味のある死とか、勇気ある立派な功績を残すとか、そんなのおかしい」
「だれだって普通じゃない人生を送りたいと思ってる」
「そうじゃない人もいる」私はイライラを隠しきれなかった。
「怒ってる?」
「そんなこと」最後までいえなかった。「そんな」私たちのあいだでキャンドルの火がゆれた。「そんなこというのは失礼よ。なにかのために生きるか死ぬかした人生じゃないと意味がないなんて。私の前でそんな話するなんて、すごく失礼」
自分が小さい子どもみたいに思えてきた。私はデザートをひと口食べた。ちっとも気にしてないって見せようとして。「ごめん」オーガスタスがいった。「そんなつもりじゃなかった。おれはただ自分の話をしていただけなんだ」
「うん、そうね」私はいった。
(p177)
何かを残して死にたいという考え方と、死ぬときに何も残していきたくないという考え方、二人の対比が面白いと思いました。
私はそれまで生きてきた時間のほとんどを、愛してくれた人たちの前で泣かないようにしてきた。だからオーガスタスがなにをしているのかわかった。歯を食いしばって、顔を上げて、自分に言い聞かせる。泣いているところを見せたら、自分を愛してくれる人たちを悲しませてしまう。その人たちの記憶に、自分の悲しい思い出しか残らなくなる。悲しいだけの存在になるのは嫌だ。だから泣かない。自分にそう言い聞かせながら天井を見上げる。そしてつばといっしょに涙を飲みこむ。声をもらしそうになる喉を黙らせる。そして自分を愛してくれる人に笑顔を向ける。
(p224)
泣かないようにしてきた、とさらっと言っているけど、実際に主人公のヘイゼルがどんな闘病生活を送ってきたか、読み進めながらその生活を想像すると胸が苦しくなってきます。
そんな中で、16歳にしてGED(一般教育終了検定。合格すると高校卒業に相当する証書がもらえる)に受かってすでに短大で講義を受けているヘイゼルが凄すぎる。
また、ERに運ばれた患者が、最初にしなくてはならないことも初めて知りました。
まだある。ヘイゼルはすごくきれいだ。いくら見ていてもあきない。ヘイゼルが自分より頭がいいのか気にしなくていい。いいに決まってる。ヘイゼルは面白いけど、意地悪なジョークは絶対にいわない。ヘイゼルを愛してる。ヘイゼルを愛せておれは運がいい、ヴァン・ホーテン。この世界で生きる以上、傷つくかどうかは選べないんです。でも自分を傷つける人を選ぶことはできる。おれはいい選択をした。ヘイゼルもそう思ってるといい。
私もよ、オーガスタス。
私も。
(p327)
読み終わった後、もっとこの二人を見ていたかったな、と思いました。
映画のオーガスタスがかわいらしくて、内容を思い出して余韻に浸りました。
好きな人と好きな本の話をして、二人でその作者に会いに行く、という展開が羨ましすぎる。読んでいるこちらも楽しい旅行気分でした。
アンネ・フランクの博物館の様子も詳細で、行ってみたい気持ちが強くなりました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。