おはようございます、ゆまコロです。
星新一『声の網』を読みました。
タイトルから何となくイメージできる通り、インターネットを想起させるお話です。
書かれたのが1969年というのが凄いです。
ショートショート(超短編)で有名な星新一先生には珍しい、長編です。いろんな登場人物の話がまとまって、一つの話になっています。
土産物屋の主人の話(1F)と、死んだ同僚の声を聞く話(5F)と、アル中の男(6F)と、勉強する少年の話(7F)が好きです。
ほんとに彼の好みにぴったり。だれかが彼の心をのぞき、そこにあるイメージにぴったりの女の子をさがし出し、おくりものにしてくれたかのようだ。少年はしあわせだった。
それはコンピューター群のやったことかもしれない。コンピューター群にとってもいいことなのだ。危険思想がめばえ、はびこるおそれが、それだけ少なくなるからだ。
偶然のように見えて、実はコンピュータがやったことなのかもしれない、という結末は、まあありかな、と思いつつも、なんだか大味な気もします。
物語の最後近くになって、
コンピューター群=人間が求める神
というテーマが見えてきます。
面白いのですが、こうしてざっくりまとめられると、少し興ざめな感じも否めませんでした。
12編がこんなにバラエティに富んでいるのだから、星新一先生らしく、ちょっと不気味なまま終わっても良かったのでは、と(余計なことを)思ってしまいます。
実は表紙の片山若子さんの絵が好きで手に取りましたが、少しいつもと違う印象の星先生の本でした。
最後まで読んで下さってありがとうございました。