ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

森鴎外『ヰタ・セクスアリス』

おはようございます、ゆまコロです。

 

森鴎外ヰタ・セクスアリス』を読みました。

 

性欲的生活(ラテン語)という意味のタイトルらしいのですが、全体を通して、肉体的な欲望を綺麗に客観視している、といった印象でした。上品ささえ感じます。

 

 

僕はどんな芸術品でも、自己弁護でないものは無いように思う。それは人生が自己弁護だからである。あらゆる生物の生活が自己弁護であるからである。

 

 

まあ共感できるかな、と思った考え方です。

ドイツ文学者・高橋義孝さんによる解説にはこうあります。

 

 

鴎外文学の魅力は、生への軽蔑と生への愛情との不思議な混淆(こんこう)にあるといえる。この二つの感情は、鴎外文学の二つの根本的な色調である。

 

 

この本が書かれたのは明治42年とのことですが、主人公が結婚を急ぐでもなく、理想の女性像ばかりを押し付けるでもなく、飄々としているところに不思議と、「古くない」感を抱きました。

 

著者の経歴には、

「軍人としては軍医総監へと昇進するが、内面では伝統的な家父長制と自我との矛盾に悩」んだ、とあり、そんな考え方も反映されているからからも知れません。

 

川端先生の本の後に読むと、(「みずうみ」のあとに読みました。)注解が多くてなかなか進まず、手ごたえのある本でした。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

ヰタ・セクスアリス (新潮文庫)

ヰタ・セクスアリス (新潮文庫)