おはようございます、ゆまコロです。
著者お二人の「競訳」が見どころの本です。
「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」が良いなと思いました。
お二人のお話で、興味深いのは、登場人物のセリフの訳しかたについて。
(村上春樹)「朗読会というのは、あれはひとつの余興だから、そんなに意味ないんですよね。ま、うまい人はいるけどね。だから、登場人物の科白なんかは口に出してしゃべっちゃうと、何かすごく変に響くときがありますね。目で見ると普通なんだけど。で、僕は自分の小説が映画になるのが好きじゃなくてだいたい全部断ってるんですが、それは自分の書いた科白がそのまま音声になってるのが耐えられないからです。」
(柴田元幸)「そうですね。それはかなり違ってくる。逆に、しゃべるんだったらこうしゃべるのがリアルなんだけど、字にするとおかしいというのもありますしね。音声的なリアリティーと文章的なリアリティーはもちろん違うんだけど、ただ、たとえば村上さん訳のカーヴァ―と柴田訳のカーヴァ―とを比べると、やっぱり村上さんのほうが、文章から声がはっきり聞こえるんですね。これは、しいて違いと言えばということなんですけども、僕はたぶん音の大小みたいなものが文章の中にあるとして、その大小の段階的差異を精密に再現することに神経を使っているんだろうと思うんです。で、村上さんの訳は、ここが大きい、ここがポイントだみたいなところをガシッと捕まえている気がするのね。だから、目に飛び込んでくる飛び込み方が違うんだろうなと思うんですね。」
私は柴田元幸さんの訳したポール・オースターの作品が好きなような気がしていましたが、この本を読んで、彼の訳というよりは、オースターの物語の切り取り方が好みであるように思いました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。