ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

村上春樹『シドニー!②ワラビー熱血篇』

おはようございます、ゆまコロです。

 

村上春樹シドニー!②ワラビー熱血篇』を読みました。

 

シドニー五輪のルポタージュの後編です。

この巻では、有森裕子選手の求める、「人間的なランナー」として生きることは、どれほどしんどいことかが垣間見えます。

 

印象的だったのは、シドニー聖火ランナーを務めたアボリジニーのキャシー・フリーマンの競技です。

彼女は400mで金メダル獲得をした後、アボリジニーの旗とオーストラリアの国旗の二つを身にまとい、トラックを一周して議論を呼んだそうです。

 

 ある種の人々は変化を憎む。あらゆる種類の社会的変化を、自分に対する個人的な侮辱や攻撃のように考える人もいる。複合的な視点を持つことを、精神の後退だと見なす人もいる。

 

 そんなわけで、キャシー・フリーマンの闘いは、この先も長く続くことだろう。

 

 

そして最後の、オリンピックに対する著者の感想が何とも村上さんっぽいと思いました。

 

 

正直に打ち明けてしまえば、僕は最初から最後まで、このオリンピックという装置に共感を抱くことはできなかった。あまりに巨大すぎるし、あまりにも権威主義的だった。多くの意志はあまりに効率的であり、あまりに多くの勝利が各種のアディクション(中毒性)によって歪められていた。

 

 

来年のオリンピックを前に、予行演習的な読書としては面白いかもしれません。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

シドニー! ワラビー熱血篇 (文春文庫)

シドニー! ワラビー熱血篇 (文春文庫)