ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

舞城王太郎『熊の場所』

おはようございます、ゆまコロです。

 

舞城王太郎熊の場所』を読みました。

 

短編集です。収録されている3篇の書体が全て異なっているのがなんだか可愛いと思いました。

まずは「熊の場所」より。

 

 

恐怖とは一体なんだろう。恐怖とは、一体何に対して生じる感情なんだろう。

 

 

なんだかこの作者の作品に通ずるテーマのようだなと思った言葉です。著者の本を読んでいると、怖くて思わず本を閉じたくなることがあります。

 

 

まー君が怯えていることに僕は不思議な気持ちだったが、色々な心の葛藤があるらしいことが思い知らされて、僕は深く感動する思いだった。

 

 

宏之くんの度胸と器の大きさも大したものだと思います。

恐怖を消し去るには、その恐怖の源の場所に、すぐに戻らねばならない、ということが分かったとしても、果たしてそのように行動できるだろうか?と考えると、疑問が残ります。

 

「バット男」より。

 

 

神が一人になって絶対になって得たことは、以前にはなかった宗教戦争だけだ。馬鹿馬鹿しい。多神教を取り戻せ、と僕は思う。

 

 

この考えは『阿修羅ガール』の時にも出てきたな、と思いました。

賛同できるか否かは置いておいて、信仰について自分の考えを持つこと自体は意義があると思います。

 

「ピコーン!」より。

 

 

苦難よそろそろ吉羽さんを解放してあげて。

 

 

この話に出てくるチヨコちゃんは、その言動から想像すると、見た目は派手なのではないかと思われるのですが、心遣いがきめ細やかで、純粋に優しい子なんだろうな、ということが時々伝わってきます。頭脳明晰なところが羨ましいです。

そんなチヨコちゃんが『サイラス・マーナー』を読んでいるシーンがあり、先日同じ本を読んだばかりの私も親近感が湧きました。

 

最初の数ページで気分が悪くなってきたのに、結局読破してしまいました。

怖いところと、展開が速いところ、登場人物と一緒にこちらまでもが、制御できないような力に飲み込まれるような感覚が、読者を引き付けるのかもしれません。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)