ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

アーシュラ・K・ル=グウィン『こわれた腕環 ゲド戦記Ⅱ』

おはようございます、ゆまコロです。

 

アーシュラ・K・ル=グウィン清水真砂子(訳)『こわれた腕環 ゲド戦記Ⅱ』を読みました。

 

ゲドが影と戦った1巻とは、ずいぶん雰囲気の違う続巻です。

好きなのは、テナーが海を見る場面です。

 

 

砂漠も山も、こんなふうに叫びをあげることは決してない。しかし、海は永遠にことばを発しつづける。ただ、そのことばは、テナーには初めて聞く外国語にも等しいもので、彼女は少しも意味がわからなかった。

 

 

 海に対してこんな発想をしたことはなかったので、新鮮な感じを受けました。

もう一つ、この文章も素敵です。

 

 

長い間、捕らえられていた闇の手から、今、自分の心がすっかり自由になっているのを…。だが、彼女はあの山中で覚えたような喜びを、今はどうしても感じることができないでいた。テナーは両腕に顔をうずめて泣きだした。その頬が塩辛くぬれた。彼女は悪の奴隷となっていたずらに費やした歳月を悔やんで泣き、自由ゆえの苦しみに泣いた。

 

 

 1巻にも上記と似たようなシーンがあった時に思いましたが、このシリーズでは、求めていた自分と対峙した時に、嬉しさと同時に起こる恐怖や苦しさで涙を流す描写が好きです。

 

安穏とした現状を捨てたアルハ(テナー)が、とても前向きで、勇気を持っている様子がなんだか読んでいて嬉しかったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

 

こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)

こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)