おはようございます、ゆまコロです。
乙一『GOTH 夜の章』を読みました。
主人公(僕)と友人である森野夜は、猟奇的な事件などに関心を寄せるという共通点を持っており、段々とそういった事件に巻き込まれていくお話です。
僕や森野は、異常な事件や、それを実行した者に対して、暗い魅力を感じる。心が切り裂かれるような、悲痛な人間の死。叫び出したくなるほどの不条理な死。それらの新聞記事を切り抜いて集め、その向こう側にある人間の心の、深く暗い底無しの穴を見つめるのが好きだった。
こういう興味・関心を持つ二人が中心のお話です。
主人公の考え方で好きなのは、次の考察です。
おそらく彼女の無表情さは、魔法瓶の外側が熱くないのと同じなのだ。内側に何かがあっても、それが表にまでは出てこない。
だが、人間は感情が溢れすぎたとき、どうにかしなければならない。(中略)…しかし彼女の場合、その衝動は外へ向かわずに、おそらく自分へと向かったのだろう。
読んでいくと、こういう思考の流れは、ありそうかもしれない、という気持ちになりつつも、細かなディテールが何となく現実っぽくなくて、興醒めすることが時々ありました。(登場人物の言葉遣いがやけに丁寧だったりするところなど。)
そして、どうして死んだ姉を見て、妹の夕は自分を双子の姉と偽って生きようと思ったのか、その心情が分からず最後まで引っ掛かりました。事故で亡くなりそうな姉を助けなかったという自責の念からなのでしょうか。
次巻(「僕の章」)を読めば分かるのかもしれません。
「死」という現象に興味がある姉妹が、夏休みの宿題に揃って自殺する絵を提出する、というエピソードも違和感がありました。姉妹はお互いにお互いが理解者であるという認識があり、自分たちが興味を持っているのは、背徳感を含んだテーマであるから、大っぴらに心のうちを出さない方が良い、という理解をしていそうな感じに見えただけに、「こんなことをするだろうか?」という気持ちになってしまいました。
読む人を選ぶ本なのかもしれません。
最後まで読んで下さってありがとうございました。