おはようございます、ゆまコロです。
パウロ・コエーリョ、江口研一(訳)『ベロニカは死ぬことにした』を読みました。
『アルケミスト 夢を旅した少年』と同じ作者ですが、その時とは違う訳者さんです。印象も変わるかなと思って手に取りました。
物語前半はなかなか好きな感じなのですが、時々ロマンチックに事が運びすぎるのが気になります。フィクションだと思って読んでいる途中で、自己啓発本だったんだっけ?という感じがして、ふと我に返ってしまうのです。それがこの作家の持ち味なのかもしれませんが。
そんな好き嫌いがあるかもしれない印象はさておき、物語は、何の変哲もない日常に飽きたベロニカが、薬物の多量接種による自殺を図るところから始まります。
一命をとりとめた彼女が精神病棟で出会うさまざまな人との触れ合いを通して、変わっていくお話です。
ベロニカが生還後、出会う人物の一人、エドアードが、外交官の息子として保障された道を踏み外していく様子が怖かったです。
ベロニカは自暴自棄になって自殺を試みる割には、現実主義者で、自身の結婚生活や、人生設計などのシミュレーションはとてもリアルです。
例えばこんな分析が出てきます。
(押しつけの唯一神教に制約を受けた結婚の場合、)性的欲望は一緒に住んで三年か四年で消えてしまう。それから妻は、拒絶されたように感じ、夫は閉じ込められているように思(う。)
まだ24歳で、異性からも愛されているベロニカなのに、醒めた見方です。
彼女の自己分析で、好きなのはこちらです。
今まで生きてきて、ベロニカは、彼女の知っている多くの人が、他人の人生の恐怖について心配そうに話しながらも、本当は、他人の苦しみを楽しんでいることに気づいていた。自分たちは幸せで、自分の人生は喜ばしいものだと思えるからだ。彼女はそんな人たちが大嫌いで、その若い男にも、彼自身の苛立ちを覆い隠すのに、自分の状況を利用させるつもりなど毛頭なかった。
何もかも諦めたようだったベロニカですが、他人が望むような行動をする自分ではなく、自分が思う通りに振る舞うようになっていく姿が素敵だなと思いました。
舞台はスロベニアの首都リュブリャナなので、こちらに行かれる方は読んでみると良いかもしれません。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
- 作者: パウロコエーリョ,平尾香,Paulo Coelho,江口研一
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/04/25
- メディア: 文庫
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