ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

ジョン・クリストファー『トリポッド ①来襲』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ジョン・クリストファー、中原尚哉(訳)、西島大介(絵)『トリポッド ①来襲』を読みました。

 

西島大介さんの絵が好きです。

表紙の色使いが可愛いと思って手に取りました。

 

SFの合間に繰り広げられる、現実の世界の話みたいなのがリアルで、いい味を出していると思いました。

主人公の少年と、まま母との確執や、実父との小さな衝突の描写が好きです。

 

例えばこんな感じです。

 

 

ふだんのパパは温厚な性格で、知らない人にも気を使う。そんなパパがかんしゃくを起こしたと聞くと、なんだか気分がよくなった。

 

 

地球がだんだんと侵略されていくというシリアスな展開の中でも、主人公の抱える問題は普段通りというのが、ちょっとホッとします。

 

 

 ぼくはふいに気づいた。

 大事なのは、自分が自分らしくあることなのだ。自信たっぷりで軽蔑的でもいい。心配症でおろおろしていてもいい。それが自分の生き方ならそれでいいのだ。それが人間の大事なところなのだ。イアン叔父さんたちが主張している平和とか幸福とかは、じつは死ぬこととおなじだ。自分が自分でなくなったら、もはや生きているとはいえないのだから。

 

 

主人公ローリーと、まま母のやりとりで好きな場面はこちらです。

 

 

「ああ、ロウリー、また会えてうれしいわ」

近づいてきたイルサに、ぼくは手をさしだした。

「ぼくもうれしいよ」

奇妙だった。キスされるのがいやだから手をさしだしたのだし、会えてうれしいというのは口だけのあいさつのつもりだった。でも、そのときはほんとうにそう感じていた。

 

 

1960年頃書かれた本の新訳とのことですが、あまり古さを感じません。

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

トリポッド 1 襲来 (ハヤカワ文庫 SF)

トリポッド 1 襲来 (ハヤカワ文庫 SF)