ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

高城剛『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか ―スペイン サン・セバスチャンの奇跡』

おはようございます、ゆまコロです。

 

高城剛『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか ―スペイン サン・セバスチャンの奇跡』を読みました。

 

サン・セバスチャンはスペイン北部のバスク地方に位置する街です。

住民は渋谷区の人口よりも少ない街ですが、ミシュランの三つ星レストランが三店、二つ星が二店、一つ星が四店あるという「人口一人あたりのミシュランの星の数はダントツの世界一」の街です。

 

本書ではスペインの観光戦略を、歴史と共に解説しています。

 

10か国以上のガイドが聞けるツアーバスや、ローコストキャリア(LCC)の乗り入れで他のヨーロッパから気候の良いスペインに来てもらう試み、政府が負担した建設費をわずか3年で回収したビルバオグッゲンハイム美術館(ニューヨークのグッゲンハイム美術館の分館の一つ)など、いろいろな政策がされています。

 

美食の街として有名になった成り立ちも、よくある料理店のように、師匠の技を間近で見たり、店の清掃しながら料理を覚えていく、というやり方ではなく、サン・セバスチャンで起こった新しい料理の動きは、いろんな国に出かけていって知った味や技を、料理人同士で共有することから生まれています。

 この「食」に対する考え方以外にも、その土地に住む人が、地元を住みよくしようとしたアイデアが出発点になっているものもあり、結果として、外からお客さんがやってくることにつながっています。書類審査のみでペットも旅行に同伴できる「ペットパスポート」など、観光客に喜んでもらうとはこういうことなのか、と感心しました。

 

 今後、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)などの国々で新たに誕生しつつある中間所得層が続々と海外旅行に出かけることが予測され、現在八億人の国際交流人口が二〇二〇年には倍の一六億人に増加すると言われています。

 

(中略)しかし、目的地の観光インフラがこの膨大な旅行者数を受け入れられるかどうかが、今後の観光産業の唯一の懸念材料となると言われています。逆に考えれば、しっかり問題点を解決することができれば、「観光勝ち組都市」となることができるわけです。

 

 観光産業界では、よくインバウンド、アウトバウンドという言い方をします。観光流入人口をインバウンド、その逆をアウトバウンドと呼ぶのですが、このインバウンドとアウトバウンドは、どの国もほぼ比例しています。

 

 ということは、一方的に海外から観光客を呼び込むのではなく、こちらから出向けば出向くほど、実は観光客が増える、ということが明らかなのです。

 

 僕らのまわりの小さな世界だけを見ても、旅先で知り合ったドイツ人に、日本の話をすれば、きっと彼らは日本に来たがるでしょうし、いつかそのドイツ人は本当に日本に来るかもしれません。それが日本人ではなく、マレーシア人だったら、そのドイツ人は、マレーシアに行きたいと思うのが人情でしょう。

 

 ですので、日本の観光庁がどんなに税金を投入して海外で日本観光キャンペーンをするより、日本人が一人でも多く海外に行くことの方が効果的なのです。

 

 これは、僕が実際に観光庁の海外での日本観光キャンペーンを手がけた実感です。(p30)

 

確かに、個人の旅行で生まれた交流のような小さな積み重ねが、多文化への理解や、自分の住んでいる土地への愛着に結びつくのかもしれない、と思いました。

 

そして口絵の小皿料理(ピンチョス)が、味の想像も付かず、本当に美味しそうです。

 

ロンドンやパリなどの欧州主要都市にまず向かい、スペインのバルセロナマドリードまで出て、そこから小さな飛行機に乗り換えて向かうサン・セバスチャンの街。(空港がとても小さいので、ジャンボ機どころか、ほとんどの便が50人弱の小さな飛行機の離発着とのこと)

本書を読むと、それでも行ってみたくなります。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。