おはようございます、ゆまコロです。
トーベ・ヤンソン、山室静(訳)『ムーミン谷の冬』を読みました。
ムーミンシリーズの6作目です。
この話では、トゥティッキ(邦訳「おしゃまさん」)と、ムーミントロールのご先祖さまが初めて出てきます。
ムーミントロールが、好き勝手にふるまうご先祖さまを家に招待するところや、いけ好かないヘムレンさんを庭から追い出そうと頑張るところなど、面白い所はいろいろあるのですが、特に好きなのは、冬が終わるころのムーミントロールとトゥティッキの会話です。
「「さあ、水あび小屋が、また水あび小屋になるのよ。そうして、暑くなってどこもかしこもみどりになったら、あんたは桟橋の、お日さまであたたまった板の上にはらばいになって、浜べにうちよせる波の音をききながら…」
「どうしてそれを、冬のあいだにいってくれなかったの」
「そうしたらぼくは、きっと元気になれたろうになあ。ここにりんごの木がはえてたね、とぼくがいったら、きみは、いまは雪がつもってる、と返事をしただけだった。ぼくのさびしがっていたのが、わからなかったの?」
おしゃまさんは、そういわれると、かたをすくめていいました。
「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして、自分ひとりで、それをのりこえるんだわ」」(p186)
この時の会話が、ラストのムーミントロールのセリフと微妙に重なっているのが、なかなか味わい深いです。
そしてたくさん載っている挿絵が素敵で、ついつい戻って眺めてしまいます。
特に好きなのは、シャンデリアにのぼるご先祖さまとムーミントロールの絵と、手まわしオルガンを演奏するトゥティッキと、その隣で踊るミイの絵です。
吹雪の表現が川瀬巴水の版画みたいだと思いました。
十一月から四月まで冬眠か…ということに、うらやましさを感じながら読んでいました。
ヤンソンさんも、春が来るのを楽しみにこの本を書いたのかもしれないと思いました。
最後まで読んで下さってありがとうございました。