ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』

おはようございます、ゆまコロです。

 

パトリック・ジュースキント池内紀(訳)『香水 ある人殺しの物語』を読みました。

 

何年か前に、この映画のポスターを見て気になっていて、本を手に取りました。

 

登場人物が、これは、と思った香りに出会った時の描写が好きです。

 

「バルディーニは目を閉じた。美しい思い出がよみがえってくる。若いジュゼッペ・バルディーニがナポリの夜の公園を歩いている。かたわらに黒い捲き毛の女性がいる。窓近くのバラの茂み。夜風が吹いている。鳥がさえずる。港の居酒屋から、かすかに音楽が流れてくる。耳もとでささやく声を聞いた。愛の告白を聞いた。全身にゾクッと陶酔が走り、毛穴の毛がいっせいに逆立つ。今だ!今このときだ!彼は目をあけて喜びの声をあげた。この香水は、これまでのどの香水ともちがっていた。匂いがいいというだけではない。単なる化粧品ではないのである。まったく新しい芳香であり、それ自体で新しい世界を生み出すもの。魔法の国のような豊かな世界。これを嗅ぐだけで、まわりのおぞましい現実を忘れ、こよなく豊かになった気がする。うっとりとして、かぎりなく自由になった心地、夢のようなこころよさ…」

 

こんな、喜びの声をあげるような良い香りの香水と私も出会いたいです。

 

主人公が調香師として出世する過程が面白いです。そして事件に結びつく場面への移行の仕方が巧いなと思いました。

 

でも、彼が処刑台を免れたときはホッとしたのに、ラストはもっと酷い結末が待っていました。

 

面白かったけど、映画館で観なくてよかった…。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)