ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

志賀直哉『清兵衛と瓢箪・網走まで』

おはようございます、ゆまコロです。

 

志賀直哉清兵衛と瓢箪・網走まで』を読みました。

 

私はシェイクスピアの「ハムレット」が好きなので、他の人がこの物語のパロディなどを書いていると、どうしても読んでみたくなります。

 

この本にも「クローディアスの日記」という、ハムレットを下敷きにした短編が入っているので手に取りました。

物語はハムレットの叔父・クローディアスの日記の体裁をとっています。

 

筆者がこの話を書いた経緯については、

「土肥春曙(どひしゅんしょ。俳優)のハムレットがいかにも軽薄なのに反感を持ち、却って東儀鉄笛(とうぎ てってき。俳優)のクローディアスに好意を持った。」

と解説にあります。

二人の演技を見てみたいです。

 

「—毒殺、これ程のことがどうして隠しきれるものか。人眼の多い中で、どうして隠しきれるものか。そして若し誰か知っているものがあれば、仮令(たとえ)どれ程の権力で圧(おさ)えつけようが、口から耳へ、又口から耳へと順々に伝わらずにいるものか。

 貴様は一人でも偽りなくそんな陰口をきき得る者を実際に知っているか?誰がある?貴様は一つでも客観的に認め得る証拠を手に入れることが出来たか?

 第一に乃公が若しそれ程巧みに悪事を包み得る悪漢ならば初めから見えすいた貴様のあの狂言などに易々と乗せられるような事は仕はしない。のみならず、兄の死後直ぐその妻と結婚するような事もしなかったろう。乃公にはそれが出来るだけに正しい自信があったのだ。

 貴様は上手な洒落を云う手間でもっともっと考えてくれねば困る。そして事をもっと真正面(まとも)から行(おこな)ってくれねば困る。露骨な裏廻り程醜い物はない。真正面から来さえすれば解ることも廻りくどく仕組むとその間に真実らしく誤って来るものだ。

 貴様は何と云っても乃公の最も愛する妻の最も愛する児である。

 乃公は貴様の事の為に今は妻にさえ思う事が充分に云えなくなった。

 今日は乃公の心は余程柔いだ。その内に何も彼も話し合って、互いに解る機会があるだろう。その機会の来るまでは何事も起らぬよう心に祈っている。」

  

上記から、新しい王様クローディアスは、王子ハムレットと和解することを望んでいるように読めますが、物語はまったく逆方向に進みます。

この願望と現実のギャップ…。シェイクスピア劇でとても好きなところです。

 

パロディを読むと、書いた人がハムレットのどんなところが好きで、どんなところに納得がいかなかったかが、うかがい知れてとても楽しくなります。

「あー、志賀直哉さんと「ハムレット」について話したいなー」というような気持ちになってきます。

 

他の話も面白かったです。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)