ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

ストウ夫人『アンクル=トムの小屋』

おはようございます、ゆまコロです。

 

ストウ夫人、上崎美恵子(訳)『アンクル=トムの小屋』を読みました。

 

「ジョージ(イライザの夫。麻袋工場で働いている)は胸を張った。

 「わたしの父親は、あなたと同じ白人でした。けれども母親は黒人のどれいでした。父が死ぬと、わたしたち七人のきょうだいと、母は、犬や、馬と同じように売りにだされたのです。わたしたちは違う買い手に買われました。母はわたしの買い手の前にひざまづいて、いっしょに買ってくれ、と頼みました。けれども主人は、母をけとばして、わたしを馬の首にしばりつけて屋敷につれて帰ったのです。」

 「……。」

 「わたしの主人は、わたしの姉もいっしょに買いましたが、姉は主人にむちで打たれてばかりいました。ピシリ、ピシリというむちの音を聞くつらさがどんなものだったか。―美しい姉でしたが、クリスチャンらしく生きようとしたために、主人から嫌われて、南部へ売りとばされてしまいました。

 わたしは、それからひとりぼっちで、だれにも愛されずに育ったのです。ひもじくて、犬がかじっている骨をとって、しゃぶったこともあります。でも、少年のころのわたしが、夜中に、目をさまして泣いたのは、ひもじかったからでも、むちの跡が痛かったからでもありません。母や姉が恋しかったのです。だれも愛してくれる人がいないのが悲しかったのです。けれども、あなたの工場で働くようになってから、わたしはあなたにやさしくしてもらって、はじめて人の親切を知りました。仕事もやりがいのあるものでした。そして、イライザと結婚しました。

 イライザは天使のような心の持ち主です。ハリイも生まれ、人を愛する喜びも、愛される喜びも知りました。しかし、主人はそこから、わたしをひき離そうとしたのです。好きな仕事からも、そして愛する妻や子どもからも!わたしに少年のころの犬よりもみじめな生活にもどれというのです。ウィルソンさん、あなたならがまんできますか?だれだってがまんできないはずだ!」」

 

こう語る混血児ジョージの右手に焼き印が押してあるというのも辛いですが、この後、トムと一緒に船に乗ってきた黒人の女性が、積み荷のかげに赤ん坊を寝かせているすきに、新しい主人が子どもをかかえて船から降りてしまい、女性がそのことを苦に海に身投げをする、という話にもっと気が滅入りました。

 

フィクションだと言い聞かせて読んでも、おそらく事実はここに書かれていることと似たり寄ったりだったのでは、と思い、苦しみながら読みました。

 

途中途中の挿絵も、衝撃的なものが多く、つらい…。

 

ここ何年かの間で読んだ本の中で、最も衝撃を受けた本です。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

全集の中に入っているものを読んだので、同じ挿絵があるのかは分かりませんが、一応貼っておきます。

 

カラー名作 少年少女世界の文学 アンクル・トムの小屋

カラー名作 少年少女世界の文学 アンクル・トムの小屋