ニジタツ読書

マイペース会社員のゆるふわ書評。なるべく良いところを汲み取ろうとする、やや甘口なブックレビューです。

竹宮惠子『少年の名はジルベール』

おはようございます、ゆまコロです。

 

竹宮惠子『少年の名はジルベール』を読みました。

 

竹宮惠子先生もゆまコロの大好きな漫画家さんです。

 

竹宮先生が萩尾望都先生に出会う前、名前と作風から男性だと勘違いし、結婚してもいいなって思ってた、と萩尾先生に告白するところが好きです。

 

「「私、『ジェムと10億ポンド』と比べたら、弓月さんには悪いけど、絶対にあなたの『爆発会社』のほうが好きだなって思ったの。最近にあの作品を読んだときの感激が忘れられなくってね。それで、こういう才能とだったら、結婚してもいいなって、勝手に思ってた。良かった、萩尾さんとこういう場所が持てて」

  増山さんとは大泉に引っ越す前からよく話していたけれど、彼女を紹介してくれた萩尾さんとはそこまで親しくなる時間があまりなかった。それなのに増山さんと二人で強引に東京移住を決めさせてしまって、萩尾さんに配慮が足りなかったのでは…という申し訳なさもあったのだ。

  まだ少し距離がある感じがする萩尾さんに、東京に来て本当に良かったのかどうかを確かめたくて、それならいっそ告白してしまおうと思って「結婚」という言葉が口をついて出た。大げさな表現だったが、信用してもらいたいと思った。萩尾さんから紹介してもらっておきながら、増山さんと勝手にどんどん近づいてしまったことにも、なんとなく罪の意識があった。

  彼女はそういう話を聞いて、びっくりして、この大げさなアプローチに照れていた。少しリズミカルに小首をかしげ、ちょっと笑いながら「結婚!…それは…良かった。そうね、私も結婚するならあなたのような気の長い人でないと無理かも」と言った。」p53

 

か、かわ…!(照)

 

萩尾先生と仲良くなりたいと思って共同生活をしたのに、その後大きな憧れと嫉妬に苦しみ、竹宮先生が、「距離を置きたい」と言ってしまうところが切ないです。

 

それと、読者アンケートで1位人気を取ったら、ずっと掲載したかった『風と木の詩』を載せてあげると担当に言われ、プロデューサー的な役割をする増山さんと、人気のために奮闘するところがとても面白かったです。

 

まんま、『バクマン。』の世界じゃないかと思いました。

 

この時の雑誌には、大島弓子先生に石ノ森章太郎先生に加えて、

萩尾望都先生の『トーマの心臓』と

高橋亮子先生の『つらいぜ!ボクちゃん』と

竹宮先生の『ファラオの墓』が一緒に載っているという仰天の執筆陣。

ものすごく好きすぎて、手にしたら震えそうです。

 

個人的に一番好きな竹宮惠子先生の作品は『ランド・カプリチオーソ』というスケートの漫画なのですが、これがスランプの底にあった時期に描かれたというのにびっくりしました。

 

増山さんとの打ち合わせの最中、竹宮先生は

「こうやって言葉だけで話したことをそのまま絵に描ける人なんてなかなかいないわよ」p206

と言われていますが、やはり輝くような才能を持って生まれてきたのだなあと思いました。

 

先生が思ったように漫画を描けるようになるまでの道のりは、マンガ以上にドラマチックでした。

 

最後まで読んで下さってありがとうございました。

 

少年の名はジルベール

少年の名はジルベール